03

「おかーさん、いってきまーす!!」



靴を履いて私は家を出る。気を付けるのよーなんてリビングからののんきな声と共に私は送り出された。
私が今背負っているのは何年も前に役目を終えたはずの赤いランドセルで、高校で使っていたリュックでは無い。
服も学校指定のセーラー服ではなく、私服の灰色のパーカーで中に白いワンピースを着ている。ちなみに小3だった…お母さん若返ってたな……










なんなんだろう…これ…










とぼとぼと歩きながら自分が前に行っていた小学校がある方へ向かう。
地理は変わっていないが、町名などは変わってた。
もう私はさっきまでが夢の出来事なのか今が現実なのかわからずに、もっともポピュラーでわかりやすい方法を取ろうとほっぺをつねったが、痛かった。無駄に力を籠めすぎて右の頬が赤くなって、ちょっと涙が浮かぶくらいには力を込めていて、自分が内心パニックでいっぱいいっぱいなのだと嫌でも気づかされた、












気づいて、しまった。











つねった痛みのせいなのか、ショックからなのか、それすらもわからなくなって、涙で前がかすみ始めて一歩も動けなくなった。


周りの人は泣いている私を見て見ぬふりで通りすぎて行く。
まぁ、道行く誰かに「なんで泣いているのか」と聞かれても何も言えないからどちらかといえばありがたいのだけれど…


頭の片隅ではこんなことを第三者目線で考えているどこか冷静な自分がいる、そう思うと中身と外見がちぐはぐな自分がさらに浮き彫りになるようで、更に涙があふれてきた。
















「…ねぇ、どーしたの?」














声が突然聞こえて、ビクッと肩が震えてしまったがその子は…多分、男の子で、続けて「かなしいの?いたいの?」と私の手を取って言った。何も言わない私にしびれを切らしたのか、「いこう?」と私の手を引いて歩き出した。
思わず顔をあげて「どこにいくの?」と聞けば、「…ぼくの、今いる家」と返ってきた。
一人称が「僕」ってことはやっぱり男の子か、今居る家ってどういうことなんだろうかと頭の片隅で考えてがっこうはいかないの?と聞いてみたが、きみがないてるからいかないと言われた。







将来この子はたらしになるんじゃなかろうかと泣きながら頭の片隅で本気で考えた朝7時30分の出来事―――











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