ホルマジオとイルーゾォ
※ホル(→)←←←イル
※ちっさくなる話
「ホルマジオ」
「しょうがねぇなぁー」
鏡のなかで柱のかげから顔を出す彼をちっさくして、俺はポケットにつっこんだ。
「イルー次は?」
「ワイン!」
小さな手でメモをもつイルーゾォが顔をあげる。
こうして彼はときどき買い出しについてくる。
そのままの大きさで来ればいいものを、わざわざちっちゃくなって胸ポケットに入るのがお気に入りらしい。
理由をきいても答えてくれないが、おそらく人見知りだから人に見られたくも会いたくもないんだろう。
(じゃあそもそもついてこなければいいのになァ)
しょうがねぇなぁーと思いつつ、嬉しく思う自分がいる。
なんだが気の強いネコが懐いていくみたいでかわいいだろ?
ピョコピョコはねるたくさんのおさげがチクリと刺さるがそれもご愛嬌。
「あー、あとパンとチーズかわなきゃな」
うなづくイルーゾォは何かのおもちゃみたいで笑える。
その間にもカラコロカラコロとカートは進む。
「何かほしいものあるか?」
「なにもない」
「そうか。」
「______」
何かイルーゾォが言った気がしたけれど、とくに気にも止めずパンをカートに突っ込む。
とりあえず、今日のイルーゾォもかわいかった。
男に思うのも変かもしれねぇが、
そう思うんだからしょうがねぇよなぁ。
出かけようとするホルマジオの鏡から(今日こそは)と声をかける。
優しい彼はいつも連れていってくれるのだが、
情けない俺は四回に一回くらいしか声をかけられない。
これでもなれてきた方だ。
隣に並んで歩くのも気恥ずかしいし、
それに小さくしてもらったほうが近くに居れる。
俺がこんなこてを考えているとはつゆ知らず、彼は「しょうがねぇなぁー」とお決まりのセリフで俺をつまみあげる。
「何かほしいものあるか?」
「なにもない」
「そうか。」
『今この時だけで十分。』
聞こえないようにそっと呟いた言葉は彼に届いてしまっただろうか。
赤い頬を隠すかのように、ポケットにもぐりこんだ。