雨とギアッチョとメローネ
※ギアメロ
※できてる
「ぬわっ!?」
暖かい部屋でぬくぬく微睡んでいたのが、嘘のようだ。
目の前には小さな川ができ、バケツがひっくりかえったみたいなすさまじい音が地面を弾いていく。
まだドアを開けただけなのに、お気に入りの服はぐっしょりしていた。
春雨
仕事のない午後の一時。ある者は読書にふけり、またある者は猫とたわむれ……
雨音に気付いて窓をあけると水滴まじりの生温い風がゆったり吹き込んだ。
「春だねぇ、散歩しよっかな」
「ついでにメローネ、買い出し行ってくれねぇか」
「いいぜ」
窓をしめて、恋人に微笑んだのがほんの20分前。
「そりゃあないよ!!!」
ひぃひぃ言いながら豪雨をひた走る。
予想以上の暴風に前髪は張りつくどころかまとまってオールバックだどうしてくれる。
街行く人々の傘は逆向きに開き、黒ずんだ新聞が吹き飛ばされて見えなくなった。
もはや意味のない傘をしぼませて、ポケットに入ったメモは読めるだろうかと苦笑しつついつもの店に転がりこんだ。
「ひでえ面だな」
「えっ」
声のしたほうを向くとなんとギアッチョがいた!
レジを急いで終えて駆け寄る。
「車、おいてるぜ」
「うわっどういう風のふきまわし!?」
「うっせェ」
キーをくるくる回して彼は店のドアを開けた。
「あっ」
「もう止んだな」
少し冷えた風が通り抜ける。
そこらじゅうでキラキラと雨粒が光り、小鳥が二、三羽飛んでいった。
「オメー帰ったら風呂はいれよ」
「ん?」
「風邪ひくだろが」
「一緒にはいる?」
「ほざけ」
紙袋をかかえて助手席に座る。
「ギアッチョ」
「あ?」
「春だね」
「……おう。」
ラジオから流れてきた恋の歌に瞼を閉じた。