薄い半袖の上着一枚。その下には黒のタンクトップ一枚。着脱が至って簡単な軽装だ。
「でももう少し厚着しようかレッド」
「やだ」
ベッドの上でごろごろと寝転がりながらも、レッドは間髪入れずに返事をした。すっかり寛いでくれてまぁここ俺の部屋ですけど。そうだねグリーンの部屋だね。おざなりな返答である。グリーンは張り合いのなさに溜め息を吐く。
「なんつーかさ、いいんだ、もう。お前は半袖でも平気な体質になったんだろ、多分。だからお前の心配はやめるわ。もうしません。でもな、俺が嫌なんだよ。お前を見てると俺が寒いんだよ。見てて寒い。超寒い」
「……」
「だから着ろ」
クローゼットの中から出したらしいカーディガンを手にグリーンは詰め寄る。
「……俺はグリーンを思って、こういう格好してるんだけど」
「はぁ?」
グリーンは露骨な不信を訴えた。
「お前の薄着は俺のためってことか?意味わかんねーんだけど?」
レッドもまた信じられない、とばかりに目を開く。
「……分かんないの?」
 それを契機に突然、レッドはグリーンの手をぎゅっと握る。そのまま手を軽く引き、ベッドまで寄せた。思わずグリーンは勢いのままベッドに乗り上げる。ギシッと軋んだベッドの音に、思わずどぎまぎする。レッドはイタズラをした子どものように肩を竦める。軽く上目使いにグリーンを見やった。
そんな可愛らしい雰囲気はつかの間だった。
 次の瞬間。大胆にも、レッドの手はグリーンの掌を自分の身体に宛がわせたのだ。しかも服の上からではない。素肌にだ。
黒のタンクトップの下に、自ら直接導いて招き入れる。ひたり。グリーンの掌は、レッドの地肌と掌に挟まれた。掌に持ち上げられる形で退けられたタンクトップの下の、白くうすっぺらい腹部。グリーンは咄嗟のことに二の句が継げない。レッドはそれをいいことに、さらにグリーンの掌を導く。するすると肌の上を滑らせる。少しずつ、少しずつ撫でる手付きは、やがて胸元にたどり着く。
そして――そこでグリーンは我に帰った。瞬時に「はっ」と動転して、身を引く。膝を乗せていたベッドの縁から転がり落ちてでも逃れようとした。しかしそこをレッドはさらに身を寄せて防いだ。互いの勢いで、軽く身体がぶつかる。とん、と触れあった胸から心音が伝わる。どちらも早鐘を打つ。強いて言えば、グリーンの方が早い。
 黒い髪はばらりと揺れて、茶髪の下に隠れた耳朶に触れた。吐息に意味を持たせて、そっと流し込む。
「君が俺を脱がせやすいようにと、思って…ね」





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110225
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