「悲しいだろう?」
ねぇ、君は悲しいだろう?悲しいはずだ。大切なものを失うのは、精神に堪えるね。もう戻らない全てを思うと、魂が壊れてしまいそうになるだろう。二度と会うことの出来ない彼らへの喪失感は、虚無よりも暗くて深いんじゃないかな。
まだ幼い君にとってこの悲しみは未だ未来をみたことのない、真新しくも深い傷跡となったはずだ。一生消えることはない。
「悲しいだろう?」
死という喪失は、辛いものだろうね。
――あぁ、君は僕を羨むかもしれないな。
僕は死を喪失だとは思わない。君たちには視えないものが視える僕は、死んでしまった全てと別れることはない。
ねぇ、冷たく力ない肩を抱き寄せて、耳元で囁いてあげるよ。
「悲しいだろう?大切なパートナーが、死んでしまった」
時折震える肩は、君の涙を伝えるためにあるんだろう。
僕は、嬉しくて心が震えるよ。
僕はきっと一生味わうことの出来ない感情、それを僕は君に触れることで、間接的ながらも体感する。君の細い身体を抱き締めて瞳を閉じると、深い悲しみが溢れて僕に流れてくるんだ。いつもは笑いに揺れていた表情が肩が全てが、死んでしまったように強張っている。
君は悲しみは、僕にとって苦くも甘い、珍しい喜びの味をもたらしてくれるんだ。
「ねぇゴールド君、」
君、悲しいだろう?
でもその悲しみが、僕はとても嬉しいよ。
100422