どうやらグリーンはバカになってしまったのだった。
というのも、グリーンがトチ狂ってしまったことが原因だ。ニンゲンというのはバラエティーに富んだ種類だ。ポケモンにも勿論数百と種類があるけれど、ニンゲンは誰一人同じように出来ていない。知識と知性を沢山持ったニンゲンは、その行動に無数の選択肢を持てる。その行動パターンというのは複雑なはず。
それなのに、グリーンのやることといったら、とても簡潔だ。
俺に会いに来る。俺の首を絞める。俺を思いきり噛む。血を舐める。俺を時々切りつける。それくらい。それだけ。
バトルの戦術はいくらでも持っていて数多のトレーナーを翻弄したと聞いていたのに、自分のやることといったらそれだけしかないなんて。バカと言って差し支えないだろう。

「なぁ、昨日は誰も来なかったか?来なかったよな。だってレッドからは、レッドの匂いしかしねーし。あぁよかった。レッドはとっても綺麗だから、他人に触れられたりなんかしたら汚れるだろ。そんなは許さない。」

グリーンはうっとりするように、鬼気迫るように、俺に微笑む。初めて見たときには、思わず心配してしまったような危うい笑い方。もう、見慣れたけれど。そんなことよりも、洞窟の壁に押し付けられた身体が、手で縫い止められた手首が冷える。シロガネはそれ自体が氷のように冷たくて、好きでいるようなところじゃない。寒い、そう呟くとグリーンは暖めてやろうかって笑う。途端にグリーンの白く綺麗な歯が、俺の首筋に食い込んだ。あ、と声を漏らすのと同時に血が流れたのが分かった。グリーンはその俺の血を啜る。いつものことだ。どんな暖め方だ。
鬱血の跡を残そうとするように強く吸ったり、ぴちゃぴちゃと唾液を含ませて舐めたりする。痛覚で敏感になった首筋を、グリーンは何度もじっくりと這う。俺がそのどうしようもない感覚に必死に耐えるのも、いつものこと。

「なぁ、気持ちいいのか?レッド。レッドは俺にこういうことされるの好きだよなぁ」

そんなわけない。と言う余裕も無い俺が喉をひきつらせて浅く呼吸をすると、グリーンは今度はその喉笛に噛みつく。苦しい。
疲れたので壁に背を預けてずるずると崩れると、グリーンは見下すように俺の顔を覗き込む。
緑色の両目は、どんよりと、ぎらついてる。

「だってレッドは俺のものだからな。レッドの骨も肉も皮も血も、全部俺のものなんだよ。俺だけが好きにしていいんだ。
俺だけが、俺以外が触るなんて赦さない。
なぁそうだよな、レッド、誰にも触らせるなよ、俺以外が触ったら触ったそいつを殺してやるよ。レッドに触れたところから跡形もなく消し潰す。
あぁそれに心配すんな、触られたところはきちんと消毒してやるよ。綺麗に剥ぎ取って、それで俺が食べてやる。
棄てるなんて勿体ないだろ?どんなに汚されたってレッドの皮で肉に変わりはないからな」

グリーンは地べたに座り込んだ俺の首を絞めてキスをした。苦しい。グリーンの口から酸素を奪えないかと思って舌を伸ばした俺はバカだ。酸素を絡めとったところで、気道が塞がれていては意味がないのに。これではただグリーンと嫌らしく舌を交えているだけにしかならない。
まぁ何よりもバカなのは、どう見ても狂っているグリーンに従って一人でシロガネ山にいる俺なのだけれど、
こんなグリーンでも好きな俺が、狂っているのかもしれないけれど。





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