俺が織姫と彦星を羨んだのは、彼らが永遠のような時を過ごすからだけじゃない。二人が同じ運命を歩くからだ。
星にはそれぞれ一筋の辿る道があると聞いた。織姫と彦星のそれは、互いへの変わらない恋情だ。一年、十年、百年、億光年の死滅の時まで変わらない愛。俺はそれが羨ましい。人の一生なんて一瞬だ。その癖して、その一瞬の間に幾度も移ろう。でも星は永遠みたいな時間を、忠実な心で埋める。たとえ一年に一度だとしても。反対に言えば、その間も変わらない心が、愛が、恋人が、羨ましい。欲しかった。
屑でも末端でも構わない。星になりたかった。だってそうすれば、無二の運命を手に入れられる。俺はずっとグリーンの隣にいられる。俺だけがグリーンの隣にいられるんだ。
 でも俺は気付いた。俺だけが星になっても意味が無い。織姫と彦星を羨むには、俺だけでは無意味だ。グリーンも星でなければ。同じでないと、同じ運命は歩けない。
屑でも末端でも構わない。けれど二人で、星にならなければ。



 白い服を着ているグリーン。それは俺ではなく、知らない女とお揃い。それでも幸せそう。
 沢山の人の祝福を受けながら、女は何かを投げた。歓声の中、思いの外飛距離のあるそれは、俺の目の前に落ちる。――赤いバラの花で出来たブーケだった。ブーケトスは結婚式のサブメイン。参列する女性はみんなそれを欲しがる。花嫁の投げたブーケを掴んだ人は次に幸せを掴む人だ、と。そう言われているから。
俺は真っ赤なブーケを拾った。遠くからは残念そうな、羨ましそうな声が聞こえた。でも俺は嬉しくなんか無い。花嫁から受け取った俺は、幸せになれる?花嫁の次に?

「……何で、どうして、」

そんな幸せを求めてはいない。俺が欲しかったのはグリーンだ。グリーンが傍にいてくれる運命だ。でもそれは叶わない。今まさにブーケを投げた女が、グリーンの傍にいるから。
 どうして、グリーン。俺と約束したはずだ。一生傍で愛すると。それは、嘘だった?

「……どうして、」

どうして俺じゃない。約束を破って、俺の知らない女と笑ってる。
――そこで俺は気付いた。
女とグリーンは、お揃いの服を着ているということ。真っ白な服を二人で着ている。それが、原因かもしれない。考えてみれば、俺とグリーンは一度も同じことをしたことがなかった。俺はいつも赤い服で、グリーンは落ち着いた色の服。同じ色を着たこともない。でも今、グリーンと女はお揃いの白い服だ。きっと、そう。同じ運命を選びたいなら、同じものになるべきなんだろう。だからグリーンは、あの女といる。


 なら、俺達も二人で揃いの色に染まったら。
俺とグリーンは一緒にいられるの。








100712
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