綺麗に整えられたベッドの中で俺はお前を待つ。真っ白くピンと伸ばされたシーツの上で瞳を閉じてる。けれど、眠りのなかに意識を落としたりはしていない。いつお前が帰ってきてもいいように、羽毛の布団は被らないでいる。




「別れたい」

 確かあれは五度目の別れ話。レッドは持ち前の無表情で俺に告げた。俺たちは何度か別れようという展開にめぐりあっていた。通常のカップルなら慌てふためくイレギュラーの展開。しかし、問題はなかった。俺は対処策を持っていたからだ。

 レッドの別れ話は大抵『どわすれ』で何とかなる。

――あぁごめん、なんだっけ、そんなこともあったな。まるでヤドンみたいに鮮やかに、悪いこと都合の悪いこと全てをぽかんと忘れたふりをする。そうすればレッドは大抵元通り。仕方ないなぁと溜め息を吐いてお仕舞い。あの時もそうなるはずだった。

 でもあの時は、違った。
いつもの『どわすれ』は通用しなかった。レッドは黙って首を振った。

『さよなら』

 もう嫌だと思っていたのだろうか。いつまで経ってもだらだらとお前を縛り付けようとする俺に、嫌気が差していたのか。こんな幼なじみには厭きていたのか。そうだって言うなら、それでもいいかと俺は思った。

でもじゃあなんで、別れを告げたのはお前なのに。無表情で首を振ったのはレッドだってのに。

何で、泣いたんだ。





 もしもお前があの真っ白い景色に飽きたら。果てしない空に少しでも怯えを抱いたりしたら、帰ってきてくれたらいい。彼氏なんかじゃなくていい。一番のライバルでも、最低な幼なじみでもこの際許してやる。ただ、元友達だなんて言わないでくれたらいい。どんな形でも、俺のところに戻ってきてほしい。そして帰ってきたら、こうやってベッドで寝たふりをしている俺を起こしてくれよ。

 しかし、まぁレッド様のことだ。また眉一つ動かさず『嫌だ』なんて言うかもしれない。
そうしたら俺はどうしようか。
19にもなってみっともなく泣き喚けばいい?若しくは首でも吊っておやすみなさいとでも手紙を残す?仕方の無いことだって、一人でベッドから立ち上がって鏡に慰めのキスでもしてやるか?どれもごめん被るな。
やっぱりレッドに起こしてほしいんだ。

帰ってきたら、起こしてくれ。
一言ただいまとでも言ってくれたら、今までの憂鬱なんて彼方に捨てることが出来る。レッドの顔を見れたら嬉しいし、声を聞けたら泣けそうで、指先にでも触れることが出来たら哀しくなりそうだ。ベッドに引きずり込んで、疾しいことは一切なしで抱き締めたくなるかも。ん、でもそういう態度が駄目なんだったか。

 じゃあ、やっぱり待っている。レッドが帰ってくるのを待っている。

だから、帰ってきたら、





100518
BGM・05410ー(ん)
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -