学園BASARA | ナノ




昨日の夜、朝遅刻しそうになったから早く起きようといつもより早く寝たら、すっきり起きられた6時半。我ながら早すぎたかとも思ったけれど、早く行って損する事は無いだろうと早い時間に家を出た。

***

教室に着くと誰もいないと思いきや、なんと私の右隣の席に人が座っていた。毛利君だ、なにやら真剣に一枚の紙と向き合っている。学校からのプリントだろうか?毛利君以外誰もいない教室は静まり返っており、入りづらい空気だったが、仲良くなれるチャンスと踏んで挨拶をしてみる事にした。

「おはよう、毛利君!」
「ああ、貴様か」

思っていた通りの反応に笑いながら、毛利君が持っているプリントを個人情報だと悪いから、文字は見えない程度に覗き込む。

「それ学校からのプリント?」
「・・・同好会のだ」
「毛利君同好会入ってるんだ」

意外だなと思った、毛利君って人と関わるのがあまり好きそうには見えなくて、学校が終わったら直ぐに家に帰りそうだ。

「・・・・・・」

昨日見た限り表情を表に出さないタイプだと思って、それは外れてはいないと思うのだけれど、何だか毛利君が昨日より元気が無さそうに見えた。

「毛利君、何かあった?」

隣の席の美人さんが落ち込んでいると、私も悲しくなってくる。毛利君は私の方を一度だけ見ると、持っていた紙を見せてきた。

「日輪同好会?」

学校からのプリントだと思ったそれは、同好会の部員募集の紙だったようだ。遠目からだと白と黒の学校のプリントと見間違える程シンプルなものだった。部員募集の紙は大体がカラフルなイメージだった為、明朝体で日輪同好会部員募集と書かれたそれは、寂しい印象さえ受ける。

「部員が足りぬのだ」
「えっと毛利君は日輪同好会に入ってるの?」

まず日輪同好会って今まで聞いた事がない

「そうだ」
「部員って後どれくらい足りないの?」
「我を入れて五人なら廃部にはならない」
「えっと、毛利君の他に部員は?」
「我だけだ」

突っ込みたい所が満載なのだけれど、至って真面目な毛利君に突っ込むのが可笑しいのかと錯覚してしまう。確かにこの学校は昨日見た限り変わった生徒が多い気がする。

「竹中が1週間以内に部員を見つけてこないと廃部にすると言ってきた」

竹中さんはきっと生徒会の人間なんだろう。毛利君の落ち込む姿を見ていると、会ったことも無い竹中さんをちょっとだけ恨んだ。竹中さんも仕事だから仕方ないのだろうけど

「ねえ、毛利君。日輪同好会って何をするとこなの?」

しゅん、と効果音が付きそうな姿の下を向いて落ち込む毛利君を放って置くなんて、私には出来なかった。そんな毛利君も可愛いのだけれど

「日輪を崇めるのだ」
「あ、崇める・・・?」
「日輪を称える会だ」

毛利君は相当日輪が好きみたいだ、日輪って太陽だよね?

「私も人数集め手伝うよ!」

そう言うと、パッと顔を上げて「本当か」と言う可愛い毛利君の問いに頷いた。

「転校してきたばっかりだから、役に立たないかもしれないけど、昨日お昼食べた人たちに聞いてみようよ」
「あやつらに日輪の良さが分かるとは思えぬ!」
「でも、人数集まらないと廃部になっちゃうし・・・」

毛利君はあまり納得はしていないようだったけれど、仕方ないと言ったように「そうだな」と了承はしてくれた。

「私も、日輪の良さはまだ分からないけど入れて貰いたいな」
「良いのか?」
「うん、放課後一人で帰るの寂しいしね!」

変な時期に転校してきたお陰で、部活に入る見込みが無かったし、放課後毛利君と話せるなら嬉しい。

話が纏まりだすと、生徒の登校のピークが始まったようで静かだった教室が騒がしくなり始める。お目当ての人物が早く来ないか、と教室のドアを見ていると一際目立つ銀髪が見えた。

「毛利君、元親来たよ」

小声で毛利君に教えると「あ、ああ」と緊張した様子だった。元親は席に座ると「毛利はいつもだけど、名前早いな」とさっそく話かけてきた。私は元親の言葉に頷くだけにして、毛利君に「頑張れ」と小さい声で伝える。

「ちょ、長曾我部」
「?どうした」

どもる毛利君は、私と毛利君の性別が反対だったら守ってあげたくなるほど可愛かった。わざわざ元親の方に体を向けて、後ろから見ると肩が少しだけ震えていた。

「貴様、放課後は暇か?」
「あー暇っちゃ暇だな」

いつもと様子が違う毛利君の対応に困っているらしい元親は、頭を掻きながら「なんかあんのか?」と毛利君に質問した。

「暇なら・・・・・・」

どうやら毛利君は人に頼み事をするのに慣れていないようで、言葉が途切れてしまった。元親はそんな毛利君を心配するように覗きこんでいる。

「ああ、もう!」

事情を知っている私は、震える毛利君が可愛くて仕方無くて、思わず後ろから抱きついてしまった。毛利君、お嫁さんに欲しいです。

「き、貴様!何をする!」

動揺して顔が赤く染まる毛利君に「私に任せて」と言うと、顔を斜め下に反らしながら「頼む」と小さい声で言った。毛利君の為なら、私なんでも出来るよ!

「同好会に入って貰いたいんだ」

毛利君の首に手を回したまま、元親に話かけると「日輪のか?」と返ってきたから、毛利君が入っている事は知っているらしい。

「うん、人数が足りないんだ どうかな?」
「俺が入って良いのか?」

元親が毛利君に問いかけると、毛利君は「頼む」と俯いたまま言った。この子はそこらへんの女の子より可愛いのではないか。

「ああ、良いぜ」

あっさりと了承した元親に驚いて「本当に?」と聞き返すと、それこそ日輪のような笑顔で「困ってる時はお互い様だ」と返ってきた、この人は心から良い人だ、優しい人だ。昨日「アニキ!」と叫ぶ男子生徒集団に囲まれる元親を目撃したのだが、その時は暑苦しいと引いてしまったが今なら男子生徒達の気持ちが分かる。

「ありがとう、元親!良かったね、毛利君」
「あ、ああ」

毛利君は恥ずかしそうに元親に向かってお礼を言っていた、駄目だそろそろ理性が抑えられない。

「えっと、じゃあ後二人か」
「後二人必要なのか?」
「うん、集めないと廃部になっちゃうんだって」
「じゃあ政宗はどうだ?」
「え、佐助君?私も思ったんだ!確か真田君は剣道部なんだよね?だから誘えないし、後は慶次とかすがを誘って」

慶次は昨日ご飯を一緒に食べたポニーテールの人で、元親と同じでとても良い人だった。かすがは昨日やっと出来た女友達で、とても美人さんで、毛利君とは少し違う照れ屋さんだ。

「俺はそれでも良いけどよ、政む「Hooonyeeeeeee!!」」

隣の隣のクラスまで聞こえそうな声を上げながら、教室のドアから伊達政宗が走ってくるのが見えた。噂をすると現れるようだ。

「Hey!毛利、名前から離れろ」
「我は離れるに離れられぬ、我が引っ付いている訳ではない」
「そういう事だから、伊達政宗おはよう」
「Good morning!」

昨日で伊達政宗の扱い方が何となく分かった、悪い人では無いのだ、かなり変だけど。

「政宗部活入ってなかったよな?同好会入ろうぜ」
「ちょっと、元親!」
「Ah?同好会?」
「毛利の日輪同好会だ」
「Ha!Noに決まってるだろ」

元親が早速同好会の話を持ち出したから、慌てて止めようとしたけれど伊達政宗は入る気がないらしい。良かったこいつが入ったらとても騒がしくなるだろう。

「貴様など、こちらから却下だ」
「まあそう言うなって」
「毛利、Honeyから離れろって聞こえなかったか?」
「あ、名前も同好会入るみたいだぜ」

瞬間、伊達政宗が勢い良く顔をこっちに向けた(凄く怖かった)毛利君がその様子を鼻で笑いながら「頼めば入れてやらない事もないぞ」と言った。

「お願いします、入れてください」

机に額を付けて拝むように頼む伊達政宗、プライドは無いのだろうか。

「仕方が無い、許可してやろう」
「Whooooops!!」

朝から元気の良い伊達政宗は、今から踊りだしてしまいそうだった。

「毛利君、伊達政宗うるさいけど良いの?」
「あいつの相手は貴様がやれ」
「ええ!酷い」

話が纏まってしまったので、私が抗議しても意味が無いようだ。さっきも言ったけれど、伊達政宗悪い人では無いのだ。

「お!佐助来たぞ」
「ん?みんな集まって何してんの?」
「佐助君、同好会に入ったから」
「え、俺様強制?」
「うん!後は、あ!慶次ー」

慶次が教室に入ってきたのが見えたので、そこに向かって走った。後ろから「拒否権ないんだ」と聞こえたけど、毛利君の為だ仕方ない。

「おはよう慶次、放課後暇?」
「お!元気だな名前 デートの誘いかい?」
「ううん、同好会のお誘い あそこのメンバーで」

毛利君の周りに集まる集団を指さす、すると慶次は「楽しそうだな!」と了承してくれた。みんなノリが良い。すると慶次に聞いたところで、HR開始のチャイムが鳴ってしまった。後はかすがに聞くだけだ、かすがは佐助君の隣に座っていて、伊達政宗の前の席だからHRが終わったら聞こうと、自分の席に着いた。