学園BASARA | ナノ




聞き覚えのある音楽が聞こえる、意識がぼやぼやする中でその音楽がだけが、段々とはっきりと聴こえてきた。今は何故だか解らないけど、幸せな時間だ。それを何で止めるようとするんだ、ああ、うるさい、いい加減に鳴り止んでほし……

「(今、何時!?)」

意識が一気に覚醒した、聞き覚えのある音楽とは、携帯から鳴っている目覚まし用の音楽だった、がんばって私を起こそうとしている携帯に悪態をついた事を謝りながら、携帯を開ける。

8時10分

学校が始まるのは8時40分、家から学校までは20分。つまり、遅刻しそうだ。

「(2日目にしてやってしまった!)」

ベットから急いで飛び起きて、制服と鞄を掴んでそれをリビングに放り投げる。洗面台で顔を洗って歯を磨き、制服に着替える動作を10分で終えて、棚に入っていた食パンを1枚口に挟んで
走って玄関を出る。ただ今の時刻8時25分、遅刻決定かもしれない。

***

マンションの階段を一気に降りる、此処でつまづいたら痛いなとか思いながら、もう足は止まらない。何とか転ばずに1階まで降りられた、開くのが遅い自動ドアにイライラしながら外に出た、ただ今の時刻8時28分、もう走る意味が無いかもしれない。遅刻を覚悟して、走るのをやめてとぼとぼと歩き出す、無駄な体力は使わない主義だ。マンションを過ぎるとお隣さんの大きいお屋敷みたいな家が見えてくる、引越ししてきた時は凄い驚いた、日本のお屋敷ってこういう事を言うのかと納得する程マンションの隣りには大きな家が建っていた。住んでいる人が気になるけど、まだ人が出てくるのを見たことが無い。ってあれ?人いた。自転車に跨って今から走り出しそうな制服を着た男の子だ、しかもあれはうちの学校の制服だ。知らない子かと思ったけど、あの後ろ姿には見覚えがある、確か

「あ!熱血系の男の子!」

そう同じクラスの…名前知らないや、元気の良い男の子だ。(お館様とか叫んでた)私の声に気づいたのか、男の子はこっちに振り向いた。今更だけど、何で声に出してしまったんだ私、と思いながら取り合えず「おはよう」と声をかけてみると、頭の上にクエスチョンマークを浮かべながら首を傾げていた男の子は、思い出したように、ぱっと顔が明るくなった。

「お主は昨日の転校生でござるな!」

「うん、そうそう。覚えてくれてたんだ」

「確か、名字殿であったか?」

「名字名前です、えっと名前は?」

「真田幸村でござる、名字殿歩いていかれるのか?もう遅刻してしまう時間でござる」

「だから諦めて歩いているんだよね」

「そうなのか」

「あ、そうだ。真田君良かったら後ろ乗せてくれない?」

そう狙いはこれだ、真田君には大変申し訳ないけど、見た感じ凄い良い人そうだから、きっと乗せて貰える事を信じてお願いしてみた。利用するって言ったら言い方悪いけど、実際そうだから仕方無い。すぐに了解してくれるだろうと、すでに乗る準備をしていると、真田君の顔がみるみる赤くなっていく、何だろうこの反応・・・まさか凄い怒ってる?

「女子と二人乗りなどと、破廉恥でござるううううううう!」

「えええええええええええええ」

破廉恥?何それいつの言葉よ、喋り方古いとは思ってたけど、まさか思考回路まで古い?二人乗りで破廉恥って考えすぎじゃない?

「そ、某 そ、そのような破廉恥な・・・!」

動揺しまくりの真田君、何だか自分が凄い悪い事をしたみたいだ、人は見かけで判断できないね、顔が良いから経験豊富そうだという私の判断は間違ってたみたいだ。

「あ、なんかごめんね、良いようん先行ってて!」

「いや、しかしそれでは名字殿が遅刻してしまうでござる、そ、それはいけないでござる!うおおおおお館様ああああ!」

「(この子大丈夫か!)」

「早く乗ってくだされ、某も今日は寝坊して佐助に置いていかれたのだ!」

時計に目をやると、8時32分。自転車でも遅刻だと思う。遠慮しようかと思ったけど、真田君は私を見ないように前を向きながら、耳まで真っ赤に染めて自転車のハンドルを握り締めている。そんなにしてまで乗って良いと言っているのだから遠慮するのは逆に悪いと、自転車の荷台に跨った。

「よろしくお願いします」

「行くでござる!」

自転車がぐっと前に進む、此処でもし真田君に掴まりなんてしたら、自転車が転倒しかねないので、サドルにがんばって掴まる。びゅうっと風の音が耳に入る、どんどん進んでいく自転車、加速する速度。あれ、なんか凄く速くない・・・?

「さ、真田君なんか景色が全然見えないんだけど、飛ばしすぎ「お館様ああああああああああああああ」

聞いちゃいねええ!自転車とは思えない速度を出している真田丸(真田君の自転車)。そんな速度に落とされないように必死にサドルに掴まる。ジェットコースターに乗っている気分だ。周りの景色はどんどん変わっていく、今時速何キロだろうと頭で考えながら、体力的には一日分を使い切ったと思う。