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「此処はね、貴方がいた世界とは異なる場所なの、それは分かったでしょ?」 名前が尋ねると、レギュラスは無言で頷いた。名前が自分の家に行こうと言い出したので、素直にそれに着いて行っている所だ。 「たまにね、何人か来るの、貴方の世界からかどうかは判らないけど」 マグルという言葉は前に来た人に聞いたらしい、魔法というのが何処までの可能性があるのか、自分には判断出来ないが、まさか別世界があるとは思っていなかった。けれど、あっても可笑しいものでは無い気がした。 「だから、名前教えて?」 「レギュラス…ブラックです」 まだ教えるのに抵抗があったが、この際本名でも良いと思った。もしかしたら騙されている可能性も無いでは無いが、名前くらいなら平気だろう 「レギュラスか」 名前は名前を教えて貰えたのが嬉しく、口元を綻ばせながら、歩調を早めた。 「あのね、レギュラスが久しぶりのお客さんなの。だから、楽しんでいってね」 楽しめる訳が無いとレギュラスが顔をしかめた。 「いつ帰れるかも分からないのにそんな」 「あ、そうそう言うの忘れてた。大体ね、みんなは1週間くらい経つと帰っちゃうの」 名前の笑顔にもっと早く言って欲しかった、と言いたくなったが、1週間で帰れるなら、と肩の力が抜けた。そんな保証何処にも無いのに 「だから、多分レギュラスの世界でいう魔法の力か何かで、他の世界と此処の世界が繋がったんじゃないかな」 随分といたずらが好きな人がいるんだね、という名前の言葉に兄とその友人達が浮かんだが、ありえないと頭から無理矢理消した。 「レギュラス、着いたよ」 森の中を歩いて、ぽっかりと開けた場所に着いた。そこには木で出来た赤い屋根の家と、家と同じくらいの広さの庭があった。家の形も、庭に咲く花もおとぎ話に出てきそうな物だった。 「おばあちゃん、ただいま!」 名前は勢い良く、家の入り口を開けると(もちろん鍵は掛かっていないようだ)走って中に入っていった。レギュラスも「お邪魔します」と続く 「おかえり」 中には気のよさそうな老人が椅子に座っていた、名前は老人の元に駆け寄る、とても仲が良さそうだった。 「おばあちゃん、久しぶりのお客さんだよ」 「おや、これはまた若いお客さんだね」 レギュラスこっちに来て、と名前はレギュラスを手招いた。 「レギュラスって言うの、私と同い年くらいかな?それでこっちがマーサおばあちゃん」 「初めまして、レギュラスです」 「ふふふ、何も無い所だけどゆっくりして行ってね」 名前とマーサのやり取りが、レギュラスにはあまり見ない光景だった。自分の家ではこんなに和やかなやり取りをした事が無い。 「名前に野いちごを摘みに行って貰おうとしてたんだけど、二人で遊びに行くかい?」 「ううん、平気!レギュラスと一緒に行ってくる、良いよね?」 野いちご摘みなんて本当にするのか、とレギュラスは唖然とした。これは夢なんじゃないかと思ったが、夢にしては記憶ははっきりしているし、体の感覚も普通だ。夢なら夢で早く醒めて欲しい。 「行こうレギュラス!」 いつの間にか左手に籠を持った名前がレギュラスの手を握っていた。 自分は了承していないと文句を言いたかったが、楽しそうに自分を引っ張る名前と、優しく手を振るおばあちゃんに何も言えなかった。 → |