レギュラス | ナノ

バシャン



大きな水音がして、僕は水色の世界に落ちた。しかも、ホグワーツの制服のまま、想像していたよりも暖かい水中から、ちょうど真上にある太陽が、光を注いでいるのが見えた。なんて明るくて輝いた世界なんだろう、制服が水分を吸って気持ち悪いなんて気にならないほど、僕は一瞬その世界に目が奪われてしまった。ああ、そうだ。これは確か、先輩と付き合い始めてから初めての夏、先輩に引きずられるようにプールに連れて行かれた時だ、魔法が使えないのを良いことに、先輩は僕の隙をついて肩を思いっきり押してきたのだ。そのままプールに落ちて、今に至る。肩を押した時の先輩はそれはそれは楽しそうだった。耳が水の音と一緒に、何を言っているか聞き取れない先輩の声を運んできた。絶対に笑っている。



バシャン



もう一度水音を立てて、僕は水中から浮かび上がった。太陽の光が眩しい、案の定プールサイドに立っている先輩は笑いながら、僕の名前を呼んでいた



「ごめん、レギュ、あはは、あんなに綺麗に落ちると思わなくて、あはははは」

「先輩謝る気ないですよね」



プールサイドに近づいて、先輩を睨むと、余計に笑い声を大きくしだした。相変わらず失礼な人だ。でも、どうしてだろうか、太陽の光を浴びて笑う先輩の顔が、眩しくて仕方が無い。同時に懐かしくて、切ないんだ、心臓が押しつぶされそうな程。



「あー笑いすぎて腹筋痛いよ、ごめんねレギュ、はい、手」



先輩の綺麗な白い手がすっと僕の前に差し出された、どこまでマイペースな人なんだこの人は。思わず苦笑を漏らして、その手を掴んだ。



真っ青な透き通る空を背景に、先輩は夏の日に溶けそうだった。



その瞬間、全てが消えた。

あの輝いた世界はなくて、僕はまた水中に戻っていた。真っ暗な何も見えない世界、さっきよりも冷たい水が、体を刺すようだ。おかしいな、もう未練は無いはずなのに、全部忘れたかったのに。差し出される手なんて、夢見てはいけないのに。ああ、でも、もう全部忘れてしまうだろう、消えてしまうだろう。あの夏の思い出も、全部全部





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