レギュラス | ナノ

朝、レギュラスが目を覚ますと名前は既に起きていて、寝坊をしてしまったのかと一瞬焦ったが、早くに寝たお陰で、大分早い時間に起きられたようだった。

手短に支度を済ませ、名前の家に向かう。マーサはまだ起きていないんじゃないか、という不安もあったが家に入ると、笑顔で迎えるマーサの姿があった。

理想のおばあちゃんを思い浮かべる時、大抵の人はマーサのような人柄を思い浮かべるのではないかと思う。

「おかえり、随分と早いね」
「そうでしょ?実はね」

名前は自分が今から伝える事が嬉しくて堪らないといった様子で、早口に言葉を続けた。

「おばあちゃんにずっとお世話になりっぱなしだったから、レギュラスと一緒に大掃除しようと思って!」

ニコニコと効果音が付きそうな笑顔の名前と、目を少しだけ開いて驚いた顔のマーサの組み合わせは何処か可笑しかった。まるでいたずらが成功した子供と、そのおばあちゃんのようだ。あながち間違っていないかもしれない。

「そんな気にしなくて良いのよ、でもそうね。みんなでお掃除っていうのも楽しそうね」

名前と同じようにマーサもニコニコと効果音が付きそうな笑顔になった。「お客さんにまで悪いねえ」と言うマーサに対してレギュラスの代わりに名前が「レギュはお客さんというより、私の弟みたいなものだから」と答えた。

***

「じゃあ、レギュは掃く係りね」

レギュラスは名前から大きめの箒を渡された、もちろんクイディッチで乗るような庭箒の形では無く、部屋を掃除する為の箒だ。この島には魔法があるのに古典的ですね、と言うとそっちの方が心がこもるでしょ、と名前は笑顔で返した。レギュラスはなるほど、と思い箒の柄を握った。

案外埃が溜まっているものかもしれないと思ったが、予想よりも名前の家は普段から丁寧に掃除がされているようで、掃いても目に見えての埃やゴミは出てこない。これではあまりお礼にならないな、と思いレギュラスは普段掃かなそうな所を探した。

台所の下の狭い隙間に箒を突っ込み、埃が無いかかき出してみると少しだけ埃が積もっているようだった。奥の方まで箒を入れると、何か大きなものに箒が当たった感触がした。きっと大きい埃があるのだ、とレギュラスはそれを出そうとそれを箒で抑えながら、手前に引いた。

そして、それと目があった。

レギュラスは箒を持ったまま、数秒固まって動けなかった。頭が目の前の物が何か理解出来ないらしい、それとレギュラスは見詰め合ったまま動かなかったが、それを先に破ったのはレギュラスだった。

「うわ…」

やっと出た言葉はそれだけだった、台所の下から出てきたのは埃には間違いないと思うのだが、それに2つの目が付いていて、明らかに生物だった。埃の方も驚いたのか、レギュラスを見たまま動かずに大きな目を見開いているように見えた。

「あーレギュ、埃いじめだ」

後ろに名前がいるのに気づかずに、レギュラスはびくっと肩を震わせた。ただでさえ不思議な生物を見て神経が研ぎ澄まされていたので、驚きは倍増だった。

「名前さんいきなり声出さないでください、心臓に悪いです」
「レギュそれ八つ当たり?何かストレス溜まる事あった?」
「ストレスというか、これは何なんですか!」

その埃らしき生物を名前は見慣れている様子で、「この子はうちのペットみたいなものだよ」と答えた。

「ペットって…これって埃ですか?」
「そうだねー埃っていうより、埃を食べてくれるんだよ」

ほら、と名前が指差すと埃らしき生物はレギュラスが集めていた埃に向かって、体を回しながらつまり転がりながら進んでいき、ぐるりと自分の体に埃をくっ付けた。

「食べているというより、一体化しているように見えますが」
「うーんでもこれ以上の大きさにはならないんだよ」

これはある種の魔法生物なのだ、とレギュラスは自分に言い聞かせた。

「今、お掃除中だからごめんね」

名前はちりとりの上にその生物を乗せると、少し離れた窓際に置いた。その生物は日光が気持ち良いのか、ちりとりの上で目を閉じて体を揺らしている。

「此処にはああいう生き物がいるんですね」
「そうだね、たまに見かける」

やはり此処はレギュラスがいた世界とは違った魔法の法則をもつ世界なのだ、と実感した。

「よし、じゃあ掃除再開しよう!」

此処が終わったら洗濯するから呼んでね、と名前は自分の掃除をしていた場所に戻っていった。レギュラスはまだ少しだけ速く鳴っている心臓の音にため息を吐いてから、埃集めを再開した。




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