レギュラス | ナノ

「あー疲れたー!」

どさっと名前が砂浜に後ろから倒れ込むように座ったのを見て、レギュラスもその隣に腰掛けた。

森の上にあった太陽もすでに海の方に傾いていて、時間の経過が感じられた。

「名前さん、砂の上に寝っ転がると汚れますよ?」
「良いのー水着だし」

海水のかけ合いで服は濡れてしまった為、名前は持ってきた水着に着替えていた。最初から着替えれば良かったので無いだろうかと思ったが、名前も最初からあんなに白熱するとは思っていなかったのだろう。

「レギュの分の水着なくてごめんね」
「あったら逆に驚きます」

マーサと二人暮らしなのに男物の水着があったら逆に変だ、レギュラスは上に着ていた物だけ脱ぎ、ズボンの裾を捲って着ている状態だった。それを見て名前は申し訳なさそうに眉を下げる。

「男の子用の服はあるんだけど、水着は無いんだよね」

名前はそう言ってから「あ!」と声を上げてレギュラスの方に向き合う。

「レギュ、ごめんね 服濡れちゃって気持ち悪いよね?」

慌てたように名前はレギュラスを立たせて、海とは反対の方に歩きだした。捲っているのが意味を成さない程、レギュラスのズボンは濡れていて履き心地が良くなかったのだ。

「よーしこれレギュの分ね!着替えとタオル」

名前は持ってきた荷物から小分けされた袋を二つ取り出し、一つは自分でもう一つはレギュラスに手渡した。それから森に沿って砂浜を歩き出す、まさか体を洗える所があるのかとレギュラスは驚いたが、そういえば魔法が使えるのかと自分で答えを出してしまった。

「じゃーん!此処でシャワーが浴びられます!」

荷物を置いていた場所から少し離れた所に、木で出来た小屋とまではいかない人一人入れるくらいの箱があった。名前がその扉を開けると、中には蛇口のようなものが上の方に取り付けてあるのが見える。

「もう気づいてるかもしれないけど、心の中で唱えてください」

何とも便利なシステムだ、とレギュラスはこの島の魔法に感心した。

「レギュラス先に浴びてね、はいこれ」

シャンプーやボディーソープが入っている容器らしきものを渡される、名前は先に入る気は無いらしくニコニコと笑っているが、レギュラスのイギリス育ちが自分が先に入る事に納得がいかなかった。

「レディーファーストです」
「良いの!私水着だから、ほらほら」

無理矢理背中を押されて「ごゆっくり」と扉を閉められてしまった、レギュラスはもやもやした感情が消せなかったが、此処で出て行くのも名前に申し訳無いのでなるべく早く名前と交代しようと急いで服を脱ぎ始めた。

***

「名前さん!出ました、どうぞ」

レギュラスは出来るだけの早さでシャワーを浴び終えて、名前を呼んだ。服を着て扉を開けると名前は砂浜に腰掛けて海を眺めていた

「早いよ、レギュ気使ったでしょ」
「そんな事ありません」

数日一緒に過ごし、レギュラスは案外頑固だというのが分かっていた名前は少し笑いをこぼしてからお礼を言った。

シャワーが木の床を叩く音がし始めると、レギュラスも名前と同じように砂浜に腰を下ろした。

もうそろそろ日が沈みそうな空は、オレンジ色に染まっていた。昼間よりも少しだけ冷たい風がレギュラスの頬を撫でた。シャワーを浴びた後の風はとても心地が良く、レギュラスは目を閉じる。

この島に来てから三日が経った、名前は1週間程で元の世界に帰れると言っていたがその保証は無い、それに何故かは分からないがこの島に来る直前の記憶が綺麗に無くなっているのだ。

この不思議な島は何なのだろうか、レギュラスは頭に名前やマーサを思い浮かべた。そして二人とは別に、時々名前と重なるあの少女は誰なのか、初めて見る人のはずなのに、何故だろうか忘れているだけのような気がする。

きっとそれは忘れてはいけないはずなのに。

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