小説 | ナノ

彼の何処か孤独を感じさせる瞳、いつも伏せ目がちな表情に恋をしてしまった。

ブラック家の次男というだけで、彼の名を知らない人はいない。自分も名前は知っていたが話をした事は無く、顔と名前が一致する程度だった。同じスリザリン生であり同級生ではあったが、彼はあまり喋る性格では無いのだ。グリフィンドールの兄とは正反対だった。

純血主義のブラック家、名家だ。そして名字家、私の家も純血主義の名家だ。生きていく上で不自由等した事が無い、誰もが羨む生活をしてきたのだという自覚すらある。ただ、一つだけ我慢しなければならないのが恋愛だ。純血主義の家庭なのだから、結婚する相手は純血主義でないとならない。好きな人と結婚出来るか分からない、それに嘆く人もいたが私はそこまでそれが苦だとは思わなかった。不自由した事が無い生活、それがあるならその程度我慢出来る。

けれど、恵まれているのか私の初恋は純血主義の彼だった。きっと両親に頼めば、ブラック家に結婚を申し込んでくれるだろう、ブラック家もそれを引き受けてくれると思う。

それでも初恋の相手には、自分で気持ちを伝えたかったのだ。もし、彼に好きな相手がいるのなら私が勝手に行動しては迷惑だろう。と柄にも無く気を使ったのだ。

けれど私の心配はいらないものだったらしく、彼に思いを伝えると快く了承してくれたのだ。こんなに人生がうまくいって良いのかとも思った、微笑む彼の表情が嬉しくて嬉しくて、その場で泣き出してしまったのは確か2ヶ月ほど前の事だ。

「名前さん、考え事ですか?」

随分とぼうっとしていたようだ、声のした方に顔を向けるとそこには少しだけ眉を下げたレギュラスの顔があった。どうやら心配してくれていたようだ。

「ちょっとね」

そう言うとレギュラスは、安心したような表情をしてから私の額にキスを落とした。それが心地よくて自然と笑顔になってしまう。

「もう遅いですから」

レギュラスは私の手を取ると、立ち易いようにしてくれる。私はそれに甘えてレギュラスに支えられながら立ち上がり、レギュラスに手を引かれ寮への入り口に向かう。

本当に不自由の無い人生だと思う、きっと私はこのままレギュラスと結婚するのだろう。好きな人と結婚出来て、名家で、幸せだ。

けれど、最近はレギュラスに思いを伝えなければ良かったと思うのだ。何てわがままなのだろう、と自虐的な笑いが漏れる。こんなに幸せなのに、それでもまだ欲があるのだ。

あんなに好きだった彼の瞳、あんなに好きだった彼の表情が今では嫌いになってしまったのだ。愛しいという気持ちが大きくなるほど、苦しくなる。彼の孤独を感じさせる瞳は、今も変わらず。私では彼を孤独からは救えないのだ。

そう、彼は私を愛してはいないのだから。
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