伝えなきゃ、
助けなきゃ。
誰を、いったい何を、どうして忘れてしまった?
自問自答を繰り返して、今はもう廃墟になってしまった懐かしい寮へと走る。ただ、走る。
名前も顔も思い出せないのに、その存在は知っていて
その存在に懐かしい誰かに大切な何かを伝えねばならない
今はもう廃寮になってしまった、懐かしい誰かの部屋の前へ着く頃、わたしの脚は疲れきってガクガク笑い始めていた
深呼吸をして誰も居ないであろうその部屋の扉をご丁寧にノックをする。シンと冷ややかな静かな空気が肌を切った
やっぱり、誰も居ない
ゆっくり扉を開くと、紫色の瞳がこちらをじっと見つめていた
「 、」
彼の唇が動いた瞬間わたしをどす黒い闇が覆っていく。その闇の隙間から覗いて見えたのは
君の歪んだ、笑顔
わたしは彼に何を伝えたかったのか、わたしは彼を何から助けてやりたかったのか答えはまだ思い出せない
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