疲れなんて吹っ飛んだ

神崎×鉢屋





今日は珍しく予定のない休日だ。
自主練や勉強でもしようかとも考えたが、たまにはのんびりした日があってもいいじゃないか。

天気もいいし、昼寝でもしよう。
とても寝心地のいい昼寝スポットがある。


気持ちのいい木陰を独り占めできるとうきうきと足を運ぶと、そこには既に先客がいた。

グーグーと気持ち良さそうにいびきをかいて眠りこけるのは、三年生の神崎左門だった。

どうやら、私だけのお気に入りだけじゃなかったらしい。
なんとなく面白くないような、でも嬉しいような複雑な気持ちだ。

それにしても、困った。
神崎は大の字に寝転んでいるから、私が眠るスペースがないじゃないか。

彼がここにいるのはいいとして、私の場所を占領するのはいただけない。

「おーい、神崎」

ちょっと横に退いて貰おうと声をかける。しかし、神崎は目を覚まさない。
何度か声をかけるが、私の声よりも神崎のいびきの方がよっぽど大きかった。

これは目を覚ましそうにない。
私はため息を吐いて、神崎の隣に腰を下ろした。
昼寝ができないのは残念だが、ここの日差しは暖かくて心地いい。

きらきらと輝く木漏れ日を見上げて、穏やかな空気を吸い込む。

ああ、のどかだ。
…私達が進む道は、こののどかさとは真逆に位置するものだ。
毎日毎日、演習だ実習だと忙しく、授業で学ぶことも人を殺めたり陥れたりする知識ばかりで、殺伐とした日々だ。
久しく体を休めることを忘れていたし、戦の陰にこんなのどかさがあることすら、忘れてしまっていた。
それが日常だから仕方ないのかもしれないが、ふとした瞬間に自分の現状を振り返ると、なにをやってるんだという気になる。
自分で選んだ道だし忍になりたいという気持ちに変わりないが、時折もっと別の道はなかったのだろうかと思うのだ。
こんな風に思ってしまうのは、きっと心が疲れているからだろう。

今日は一日、ゆっくりしよう。そうして、また明日から頑張ろう。


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