富松作兵衛の慟哭 富→次浦 *死ネタ 知っていたはずの顔が色を無くし瞳が光を失い、それが無機質にこちらを見ていたときにああ、これで何かが変わるのだと、半ば救いにも似た感情が湧いた。 ごめんなさい、陳腐な言葉を彼の顔に土を落とす毎に呟いた。 彼を亡くしたあいつは空虚な瞳に彼の影を探し続けて、何も知らない、いや知らない振りを決め込んだ視線は俺の前でひたと止まり、柔らかく笑んだのだ。 つまり俺は似ていたんだろう。 何度となく経験した。 俺の姿を確認して少しばかり詰まらなそうな表情をされる、それは。 だけど喜びを失ったあいつの視界に色を取り戻せるなら、それでもいい。例え俺を見てくれなくても構わない。 それすら、もう慣れっこの言い訳に過ぎないけど。 彼の振りをして唇を重ね。 彼の姿を脳裏に刻み体を重ね。 彼のためだ、あいつのためだと嘘を重ね。 ぜんぶ重ねて。 そうして出来上がったのは歪んだ妄想が形を成した、 現実。 これが望んだものなのか。 藤内は死んだ。 俺が殺したのだ。 三之助も死んだ。 俺が、殺したのだ。 彼の姿を望んだあいつの瞳は、今、俺に無機質な虚を向けていた。 土に汚れて、赤をぶちまけて。 幸せになって欲しかったのか、それとも幸せになりたかったのか。 いや二つを望んだから、こうなったのだろうか。 それでもお前等は幸福なんだろうな? 手を取り合えるのだから。 残されたのは俺だけだ。 惨めなのは、一人生き続ける俺だけなのだ。 濁った空から流れる涙は苦く、泣き喚く俺を慰めるみたいに染み渡った。 富松作兵衛の慟哭 空は誰かのために哭くのだろうか。 俺は自分のためにしか哭けないというのに。 提出:少年XXの慟哭様 ←|→ 左。 |