ギルバート→ブレイク 澄ました声で俺の名を呼ぶ、あの男。 嫌いだ。 あの男が嫌いだ。 嫌いで、嫌いで、動悸がする程に嫌いなんだ。 顔を見て声を聞き、鼻を掠めるにおいですら狂おしい程苛立ちが募る。 それは好きという感情だろうと、主人が言う。 これが好き、だと? ならばなんて忌ま忌ましい感情だろうか。 心臓に黒い靄で出来た茨が絡み付いたみたいに不愉快な心地。 これを恋と言うならば、なんて渇いたものだろうか。 この渇きを癒すために人は誰かを求めるのだろうか。 恋しい相手の血を啜り、涙を染み込ませれば満足出来るのだろうか。 その腕に亡骸を抱き体温を馴染ませることに、喜びを感じるのだろうか。 全て欲して、愛して、壊して、壊し尽くして、そして。 目も耳も鼻も手も何もかも、脳みそですら彼しか感じることが出来なくなる程に求めれば、それが答えとなるのだろうか。 くだらない。 この憎悪にも似た熱い塊を、そんな甘ったるい言葉で形容できるはずもない。 サボテンと雨 [HOME] |