ヴィンセント×ブレイク





毎度毎度、あの男はまるでブレイクの神経を逆撫でするのが趣味かのように、嫌がらせにも似た(事実嫌がらせだろう)接触をしてくる。

ブレイクが眉間に皺を寄せ睨めば睨むほど、対する男の表情は喜びに彩られる。反比例の法則だ。

今日も(唯一の友人に仕事を押し付けて)至福のティータイムを過ごしていると、一言で言えば目障りな笑顔を貼り付けてやってきた。

「こんにちは、帽子屋さん」

「……ご機嫌よう、ヴィンセント様?」

「帽子屋さんは、随分と機嫌が悪そうだねぇ?」

「……」

解ってるなら帰れ、と無言のまま視線で伝えるが、空気が読めないのか読む気がないのか(恐らく後者だが)ヴィンセントはうそ寒い笑みを浮かべたままだった。

こちらも負けじと微笑み返す。なんの効果もないのは知っているが。
それでも対抗するのを止められない。

「ふふ、帽子屋さんは可愛いねぇ……」

猫を愛でるような顔と声で言われて、ざわと感情が高ぶる。

気に入らないからだ、これは。

断じて構ってもらえて嬉しいとか、そんなつもりはない。


それなのに、
それなのに。



笑みを含んだ方の声が酷く愛しいのは何故だろう

自分もただの人間なのだ

愚かなネズミに恋をするなど

まったく可笑しいじゃないか



title:Fascinating


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