尾浜と鉢屋 鉢屋は、周りが思うほどまた自分が思うほど、強い人間じゃない。 むしろ、弱い人間だ。 好き嫌いは多いし、感情にムラがあるし、何より低血圧だ。 急に立ち上がって立ちくらみを起こす様は、まるで女のようだ。 とても、忍に向いているとは思えない(立ちくらみを起こす忍がどこにいるって言うんだ)。 「……あー」 「大丈夫、鉢屋」 「うー…まあ。ちょっとフラッとしただけだから。すぐ治る」 そう言って額に手をやり、立ちくらみをやり過ごそうとする。下手するとそのまま倒れ込んでしまうので、必死に堪えてるんだろう。 しばらくそうして血圧が元に戻るのを待ってから、鉢屋は俺に顔を向けた。その顔はまだ白く、瞳もどこか虚ろだ。 「それじゃ、仕事と行きますか」 「ああ」 お前、その内忍務中に死ぬんじゃない? そんな言葉を喉の奥に押し込んで、頷いた。 我は見ぬ振り知らぬ振り 120422メモログ [HOME] |