富松→神崎 また迷子になったと、そのとき一緒にいたらしい友人に伝えられた。 なぜ、俺に言う? なぜ、自分で探さない? いろいろ疑問はあったし腹も立ったけれど、それよりも心配の方が先立った。 馬鹿野郎と怒鳴って、駆け出した。 当てなんてない。そんなもの、あの決断力の方向音痴には意味がない。 思い付いたまま縦横無尽に駆け回り、見つけた場所は上級生の演習場だったり、険しい裏山の山頂近くだったり、毎度毎度こっちは満身創痍だ。 押し付けられて嫌なのに、こんな苦労して辛いのに、あっちの無自覚もそうだが、いなくなったと聞かされればいても立ってもいられなくて、こうして捜してしまう。 だから押し付けられるんだとわかるが、心配なんだから仕方がない。 以前、左門がいなくなったとき、学園中みんなで捜しても見つからなくて、もう夜も遅いので次の日捜すことになった。 いつも隣で寝ている左門がいない。 いびきがうるさくて寝られないこともあって迷惑しているし、寝相が悪いから足で蹴られたり、朝起きたら布団を取られてたりする。 その日はそんな心配なく眠れるはずなのに、なぜか寝付けなかった。三之助も同じだったらしく、夜中に二人で抜け出して左門を捜した。 夜も明けるころようやく見つけて、嬉しくて嬉しくて、三人とも大泣きした。 いなくなるのはいつものことだし、正直捜すのが面倒になることもある。その内帰ってくるだろうと投げ出したくなるときもある。 でも、捜さなかったら不安になるんだ。 大丈夫だろうか、怪我はないだろうか、ちゃんと帰って来られるだろうか、一人で泣いてないだろうか。 不安がぐるぐる回って、集中できなくなる。 だから結局、足は迷子を捜しにあちらこちらを駆け回ってしまうのだ。 かけあしできみのもとへ title:Aコース ほら、今日もこんなところにいやがった。 「左門!」 「! さくべー!!」 俺の姿を確認して、左門はぱぁっと顔を明るくした。 俺も、ほっとため息を落とす。 どこにも行くななんて言えないし、その首に紐を付けることもできない。 奔放なお前が好きだから。 俺は何回だって捜すよ。 お前の帰る場所はここだって。 何回だって見つけてやる。 120310 [HOME] |