池田→富松
*現パロ





ざあざあと一定のリズムで溢れ、流れる人工的な水のオブジェ。
たまに髪や顔や腕にかかる水滴が暑さを和らげてくれる気がして、もう何時間もこの噴水を眺めていた。
間違いなく家にいる方が涼しいのだが、足を動かすのも億劫だった。

別に、フラれたことがショックだからじゃない。
明日から富松先輩に会うのに気が重いからじゃあ、ない。

決して。

断じて。

……まあ? 少しくらいは憂鬱だったりする訳だが。


それよりも今は、さらさらと静かに流れ行く噴水を見ていたいんだ。

これは、彼に似ている。
奔放で、透明で、掴むことは出来なくて、この暑さの中とても輝いていて。

ほんの少し、冷たいところも。

……なんて、感傷に浸ってしまうのは少なからず傷付いたからである訳で。

明日からも笑顔で話せるよう、俺は温かく流れる涙を、拭うこともしないで目を閉じた。



夏の感傷


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