次屋×富松 *現パロ 「今日、家誰もいないんだ」 休み時間、特に話をするでもなく雑誌を読んでると、突然三之助が呟いた。 あまりにもいきなりだったので言葉の意図が掴めず、俺は顔を上げて三之助を見る。三之助は何の感情も読み取れない、いつもの顔で雑誌を読んでいた。 「で?」 何が言いたいのか解らないので率直に尋ねる。 三之助は眠そうな目をこっちに向けて、不思議そうに首を傾げた。 「“で?”?」 「で。」 短い、同じ言葉の応酬だが、これで十分。伝わる。 三之助はうーん、と一つ唸ってから、俺に向き直り、そしてにっこりと、猫でもびっくりするような猫撫で声で言った。 「作の手料理が食べたいな」 三之助の手にある雑誌の表紙を見て、俺は盛大にため息を吐く。 カラフルで見た目にも美味しそうな料理の写真が載った表紙には、“彼氏のハートを離さない! 手料理特集!”と大きな文字が踊っていた。 そんな安っぽい雑誌を読む三之助も三之助だが、それに乗せられてしまう自分も大概だなぁと心の中で呆れる。 仕方ない、今日の帰りスーパーに寄ろう。 「お前、荷物持てよな」 「りょーかーい」 相変わらず抑揚のない声と表情だが、微かに鼻歌を歌っているところから、上機嫌なのがわかる。 自然と口の端が緩む。 ツーカー 120104 [HOME] |