久々知×鉢屋






「三郎、顔死んでる」
「私、暑いのムリ」

今日は授業がなく、特にすることもない(三郎の場合、する気力がないと言った方が正しいかもしれない)ので、自室の日陰で涼んでいる三郎の傍に腰を下ろした。
ぐたりと畳に体を投げ出し、装束をはだけさせてパタパタと風を送っている。頬を上気させた気怠い表情の三郎は、常にはない空気を纏っていた。
俺が、それをなんと表現するのだったかと、さらけ出された鎖骨に視線をやって考えていると、こちらを見上げた三郎が煩わしそうに口を動かした。

「お前の顔を見てるとイライラする。もっと暑そうにしろよ」

首筋をつたう汗に、ムッとした感情がこみ上げてくる。
そうそう、煽情的だとか誘ってるとか、そんな印象。
つまり俺は三郎に欲情してるんだな。

「俺はお前にムラムラしてる。もう十分熱くなってるさ」
「……沸いたか」
「お前にな」

互いに、一瞬の沈黙。ジワジワと、蝉の鳴き声がやかましい。
気取られる前に距離を詰め体を重ね合わせるが、流石に勘が鋭く、体の間に足をつっかえられた。

「三郎、痛い」
「俺は暑いんだ。とっとと退け!」

ぎりぎりと、三郎が膝で体を押してくるのであばらが痛い。慣れているだけに容赦がない。

「少し、少しだけだから」
「お前の少しは全然少なくねぇんだよ!」

口吸いの一度や二度構わないだろうに、顔を近付けてもそれを両手で阻まれてしまう。その手に、自分のそれを絡ませて畳に縫い付ける。

「三郎の手、熱い」
「お前が冷たいんだ」

三郎は手だけじゃなく体全身が熱かった。まるで命そのものを表現しているみたいな熱に、いやらしさを感じる。
次第に装束越しにお互いのくっついてる部分が、熱いのか冷たいのか温いのか、まったくわからない程に混ざり合って心地よくなってくる。じっとりとした湿り気を帯びた熱が生まれる。
暫くそうしてじっとしていると、ようやく観念したのか、三郎は大人しくなった。
俺はその首にゆっくり噛み付いた。
汗の滲んだ素肌は、しょっぱい味がした。

どくどく脈打つ首筋は命の証。
そこに残すのは俺の証。


ポン酢を掛けて食べたら美味そうだ。

ああ、このまま蕩けてしまいたい。


午後、君と融解


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