鉢屋





私が求めるものはいつもどこかへ逃げてしまうんだ。
欲しいものがあったのに、それが欲しくて追い掛けていたはずなのに、なんでだろう、気が付けばいつも私の手の届かないところに行ってしまっているんだ。

私が置いて行ってるんじゃない、私が置いて行かれているんだと気付いた時の悲しさ。

私は「此処」にも望まれてないんだと知った時の恐ろしさ。

人は変わって、移ろって、なくしてしまうばかりなのに、空が変わらず微笑んでくれた時のありがたさ。

結局、私も流れ行く命の一部なのだから、何一つ残るものなど無いと解った時は、嬉しかったなあ。

こんな私でも存在価値を認められたみたいで、柄にもなくにこにこと空に手を振った。

“ありがとう、私を救ってくれて”

と。

誰に言えばわからないから、何よりも広い、空に。

空はなんにも言わなくて、全く変わらない青さで私を見下ろしていた。
涙が出た。

嬉しさと、悲しさと、愛おしさと、嫉妬とか、いろいろな感情が入り乱れてぐちゃぐちゃな心で、涙を落とした。

誰にも言えないから。空へ


[HOME]
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -