不破と鉢屋
*死ネタ






「どこかに消えてしまいたいなぁ」

「またそんなこと言って」

(出来ないくせに)

消えてしまいたい、死んでしまいたい、どこか遠くへ行ってしまいたい。
それが僕の、僕と同じ顔をした友の口癖だった。

僕はそんな友の戯れ事に対していつも、口に出る言葉とは正反対のことを考えては、その友を見下していた。
彼が生きることに消極的で陰欝になる程に、不謹慎にも僕の心はうきうきと踊り出す。
まったく友達甲斐の無い男だと、我ながら思う。

しかしそれが僕らの共存関係であり、僕らの関係が共にある限り続くものだ。

と、僕は

勝手に、

不様に、

盲目的に、

思い込んでいた。


ので、信じられなかった。


横たわる君の顔が驚く程白く、かつては僕と同じものだったとは思えないくらい白く、冷たく、硬くなってしまったことを。

理解できなかったし、したくなかった。


僕は泣かなかった。
そこに悲しみはなかったから。
僕は叫ばなかった。
心動かされることはなかったから。

あるのは空白。

君がいたはずの、ぽっかり空いた心の穴だった。


裏切りは斯くも白々しく


僕は悲しくない。悲しくなんかない。
君を無くして、悲しんだりしないよ。

残念だったね、僕の友。



とわにさようなら。


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