次屋×鉢屋 *現パロ 「鉢屋先輩、デートしましょう」 俺は他人から大概唐突な奴だと評価を受けるが、ここまで唐突なことは言わない。つまりこの子は、この次屋三之助は、俺以上の非常識と言うことだった。 「え、っと」 話が見えないな。何故次屋君は俺にデートの誘いをかけているんだろう。 「俺たち、付き合っていたっけ?」 「いえ、……あっ、忘れてました。付き合ってください、先輩。そしてデートしてください」 「いや、いや、いや。色々間違ってるから。本当、色々」 まず、何故次屋君が俺に告白するのかが理解できない。そんなに親しくした記憶もないし。 友達の後輩だったとか、そんな程度の知り合いだし。 「君、俺のこと好きなのかい?」 「はい。室町時代から好きです」 「…………帰っていい?」 この子はナニか? ちょっと電波なアレな子か? 「そういうのは間に合ってるから」 豆腐が恋人とか、そんな感じのアレな奴は一人いればいい。 「付き合ってるんすか?」 「豆腐と? まさか!」 「豆腐なんですか」 「いや、違うから」 噛み合わないし。 「先輩は、俺のこと嫌いすか?」 「や、嫌いではないが……、それ以上の感情も」 正直、ない。 うん、つか、次屋君のこと全然知らないし。 曖昧に言葉を濁すが、次屋君は大して気にした様子もなく答える。 「俺は鉢屋先輩のこと知ってますよ、室町時代から」 「そのネタはもういい」 ほら、またそんなことを言う。 くっだらない冗談を、真っ直ぐな瞳で。 調子、狂うな。 「はっきり言うと、俺、人を振り回すのはそりゃあもう、大っ……好きだけど、その逆は嫌なんだよねぇ」 「知ってます。最低っすよね」 次屋君は感情を込めずはは、と笑う。本当、変な子だ。 「君ね……。で、俺はさっきから君に振り回されている訳ですが。……意味、わかる?」 「はい。俺を理解して貰えば、問題は解決すると思います」 自信ありげに見詰められる。 何を根拠に? 「なんで、俺なの」 「鉢屋先輩だからです」 「ふは、」 だーから噛み合わないっての。 「だって、先輩は鉢屋先輩じゃないですか。……俺はずっと貴方に会いたいと、伝えたいと思ってました」 彼の言う大半は理解できない言葉だ。根本的にボタンを掛け違えているんだろう。 だけど。 彼は本当のことを言ってるんだろうなぁ。 本当に俺を、好いてくれているんだろうなぁ。 俺も大概根拠がないが、漠然とそう感じたんだ。 不覚にも、もっと知りたいと思ってしまった。 「鉢屋先輩、好きです。俺と付き合ってください」 返事は一度 短く、頷いた。 100629 [HOME] |