久々知+鉢屋(雷鉢)





“確かに私の姿は似ても似つかないものだが、しかし人間であるという点に於いては彼と私に違いはないはずだ。
それなのに、どうして私と違って雷蔵はあんなに綺麗なんだろう。”



三郎は心の底から解せない、というように眉根を寄せてため息を吐いた。

兵助はそんな三郎の姿に茫然とした違和感(なぜそんな疑問を持つのか解らない、といったような違和感だ)を抱きつつ、件の雷蔵の顔を思い浮かべる。


兵助の認識する不破雷蔵という男は確かに穏やかで心が優しく好ましい人柄ではあるが、綺麗という形容をするとなると、まったくちぐはぐな気がした。
それならば六年の作法委員長なんかの方がよほどお似合いである。

そう思ったし、実際口にも出そうとしたが、止めた。


ここにはいない彼を想う三郎があんまりうっとりとした表情をするものだから、無粋に感じたのだ。

その盲目的な好意がなんと言うのか、兵助には分からなかったのだけれども。


虚像の理想



水面に映る己に焦がれる猫を思い出した。

いかに知恵があろうとも、人は人なのだなぁ。兵助は一人、感慨深く呟いた。


4月日記ログ


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