富松→次屋





何年か前から付き合いだした(交流という意味で)次屋という男と、付き合いたいと(交際という意味で)思うようになったのはいつからか。

覚えちゃいねえが、俺は男で次屋も男で、当然ながらそんな感情不毛で、抱く方がおかしい。

まあおかしいと言っても抱いちまったもんはしょうがねえし、この男に惚れた自分にはそれなりに誇りがあるのでそれは構わない(どこが好きか問われたら返答に困るが)。
開き直りだ。


次屋は昔から何を考えているのかわからない、すっとぼけたところがあるので本心は知らないが、俺が考え得るあいつの性格性分性癖その他から推察するに、ああ、あと世間一般的な常識も含めて、――簡単に、そして完全に俺の片恋だと理解できた。

次屋は俺の親友(とも)だ。
至極自然な結果なので悲しくもないが(全くとは言わないが)、逆にこうも自身で冷め切っていると虚しくなってくる。

この熱を欲する空の手は、永遠に求めるものを掴むことができないのだと、自嘲的な悦びが沸き上がる。

しかたがないと己を慰めるだけが、唯一できる懇ろだ。

内心では自分を愚かだと罵りながら、今日とて俺は恋しい人を見詰め続ける。
それはもう、敬愛の念すら込めて。



真摯なる矛盾

自らを貶めるならば、どうして他人を愛せようか。

目を閉じ見えない振りをして、盲のように恋をする。


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