鉢屋 不意に、本当に不意に――厳密には何か法則性があるにしてもだ、突然にやってくる焦燥感のようなものが、私の一番不確かで繊細な所に警鐘を鳴らすときがある。 例えばそれは取り繕いの自尊心を傷付けられたときであったり、戦で荒らされた村の道端に崩れる幼子の死骸を見たときであったり、何気ない日常に紛れ込んでいるのだ。 そういったごく普通、なんら気に留めることもないはずの人間的な悲しみや怒りなどの感情が酷く心を痛め付ける。 当たり前のことなのだが、それが気に入らない私は自分に苛立つ。 笑おうと思うのに上手く笑えず、仮面を貼付けるのが特技の癖に、どうして付けたものか忘れてしまうのだ。 取り繕いに取り繕いを重ね自分の真意すら測りかねて、暗い、底もなければ壁すらない暗闇という落とし穴に自ら嵌まってしまうのである。 もがけばもがくほど傷付けるのは自分自身であり、抗うほどに底無し沼の如く執拗に絡み付いてくる。 そうなればもう、上手に息をすることも敵わなくなる。 ひとつ息を吐き、ひとつ息を吸う毎に自分の首を緩やかに絞めていくのだ。 そう、まるで死に方を探すように。 死に方を探して息をする title by告別 [HOME] |