次屋
*死ネタ





自然の摂理ならば、別れだろうが辛くない。
定めならば。受け入れるしかないならば。足掻いても無意味ならば。
すべてを受け入れる。

闇に濡れた夜が辺りを包み込み、薄らと残すのみとなった視界が捉えたもの。

俺がそれを見下ろしながら考えたことなんて、そうした陳腐な自尊心からくる軽薄な自己満足でしかなかった。


現実など夢幻とは遠く掛け離れ、五感で感じ得るすべて、それ以上のなにもかも俺という生き物そのものが体のどこにもない空虚な部分だけを切り離してしまった。


静寂がうるさい。
ジリジリと、刻限のように鳴り止まない耳鳴りは現実を一層遠いものにする。


馬鹿みたいだろう。こんな。

目の前に転がっているのは紛れも無く俺の友だ。心配性で面倒見の良い、友だった男だ。

今はただの肉塊。腐るだけの存在。

消えゆく存在だ。
言葉にすると、それだけ。
なんのことはない、受け入れざるを得ないただの事実。


頬を熱いものが伝おうと、触れることのできない体のどこがが悲しかろうと、受け入れるしかない。

作兵衛は死んだ。
もう動かない。喋らない、笑わない、怒りもしないし、心配もしてくれない。


それだけだ。
事実は事実として普遍に在するだけであり、そこに個人の感情など入る術もなく、感情を顕わにしたところで後に残るは虚しさばかりなのだ。


単純だろう、世界なんて。
明白すぎて、おかしくなる。


俺の悲しみなど置き去りにして世界は廻る。

その世界の上で立ち尽くす俺は、同じようにして廻ることしかできないんだ。




受け入れようとも死は死でしかく、事実であろうと心は


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