次屋×富松





いつもの様に委員会のマラソン中、いつもの様に皆がどこかに行った。

あれ、皆どこに行ったのかな、いや、ここはどこだろう、なんてことを生い茂る竹薮を歩きながら、漠然と考えてた。

不安や恐怖はなかった。

だって。
ほら。

「ったくてめぇは毎度毎度、無自覚の癖に動き回んなっての」

「作」

生い茂る草を掻き分けて現れたのは。

いつもの呆れた顔の思い人。

「作、じゃねえ! こんなわかり辛ぇとこに迷い込みやがって…」

そう言って俺の腕を掴んだ不機嫌な顔に、自然と笑みがこぼれた。

「でも、作は来てくれるだろ?」

それが嬉しい。
いつだって、怒った顔でも俺の腕を引いてくれる。
どこにいたって、絶対探してくれる。
昔からそうだった。

いつからかなんて忘れてしまったけど、だけど頼もしく俺を引っ張ってくれる手の温もりは、覚えてる。
俺より少し小さいけど、でも誰よりも温かいこの手が好きだ。

「作」

「……なんだよ」

相変わらず不機嫌そうな背中に告げる。

「大好き」


返事は帰って来なかったけど、でも頭巾から覗く真っ赤な耳は、どんな言葉よりも正直だった。



保護者、愛しい人
091207


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