不破と鉢屋





「うーん」

「どうしたんだい、雷蔵」

「ああ、三郎か。いや、少し悩みごとがあって、困ってるんだ」

「へぇ、悩みごとが。雷蔵、君は幸せだな」

「からかうなよ。それとも、なにか? 悩むことが幸せだとでも? 決断力がある者にはわからないのかな」

「違う、そうじゃない。私にだって悩みはある。ただ、悩みが明確であることが羨ましいのさ」

「どういうことだ?」

「私は、自分がなにに悩んでいるのか、わからなくなることがある。ただ、漠然とした悩みはあるものの、その正体を掴めないでいるんだ。これじゃあ解決のしようがないのさ」

「そういうものなのかい? それは、不自由なことだ」

「だろう? だから私は、悩みが多くとも明確な君が羨ましい」

「なるほどね。だけど、やはり僕からしてみれば、悩みは少ない方がいいな」

「結局、ないものねだり、ということか」


ないものねだり
20120522メモログ


[HOME]
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -