ユウジ→小春
*死ネタ





イライラする。ムシャクシャする。なんで世の中はうまく行かへんのん?

こんなに、こんなにも好きで、大好きで、苦しいくらいに好きやってのに、なんでちっとも伝わらへんのやろ。

ただ一人大好きな人なのに、彼が俺を振り向いてくれることがないんやと思うと


悲しくなった。

いつものこと。

仲いいのんはコートの中だけ。

あの四角に区切られた舞台から降りると、もうただの他人。

冷たい視線。払われる腕。遠ざかる背中。

いつものこと。

せやのに、なんで堪えられへんかったんやろ。

報われへんなんて今更。それでも好きでいようって決めた。

覚悟はそんな軽かったんか?


ジリジリと熱くなる頭。吹き抜ける風に冷やされて心地がいい。


――そんな簡単なもんやない。

……じゃあなんで諦めるん。

――諦められるわけないやろ。

……じゃあなんでここまで来た。

眼下に広がる風景に唾を飲み込む。


もぉな、疲れてしもたんや。

誰に問われてもいない言い訳を、心の中で呟く。


これが俺が小春を振り向かせられる、最後の手段やねん。

一歩足を踏み出す。浮遊感が強まる。
握りしめた拳がいやに汗ばむ。
目を瞑ると、幾らか心が落ち着く。

もう一歩踏み出そうとしたとき、後ろのドアが開いた。

ちらと振り返ると、焦った顔があった。

「―――…っ!」

口が何かを伝えるために動くが、残念ながら俺には届かなかった。

堪忍やで。ちょっとくるのが遅かった。

「めっちゃ好きやで、小春。……ごめんなぁ、」

あれほど怯えていた心は、不思議と静かやった。


風とともに落ちる。


心は拾われて





「ユウジ先輩っ…!!」


もう空の青しか映らない視界。耳に届いた最後の声は、愛しい人のものではなかった。

残念、無念、また来週、ってな。

人生最後の企みは、俺の知る限りでは叶わんかった。

だから、お前が見届けてな。


[HOME]
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -