金色×一氏←財前





「でな、小春めっちゃかっこいいねん!」

目の前に座るユウジ先輩は、身を乗り出さんばかりに力説。瞳はキラキラと輝いている。
大層かわいい。
かわいいことには間違いないが、その台詞が気に食わない。

小春先輩はユウジ先輩の恋人。
二人はコート上だけのカップルだったはずなのに、いつの間にか付き合うようになっていた。

もう、二ヶ月くらいになるだろうか。
付き合う前のユウジ先輩の口癖は「小春かわいい!」だったが、最近は「小春かっこいい!」になっている。

それもそのはず、以前は小春先輩はオカマキャラを売りにしていて、女言葉を使ったりもしていたが、最近はそのキャラを辞めたらしい。
割と普通に男子中学生をしていて、むしろ小春先輩にメロメロで頬を紅潮させ瞳を輝かせる、目の前の先輩の方が女のよう。

一番腹が立ったことは、彼が俺に言った言葉。

“お前にはユウくんは渡さへんで”

一人の男の顔をしていた。
俺の顔を真っすぐ見つめて。

負けたくない、と思った。

だけど。

「……そんなん、俺の方がかっこいいすわ」

嬉しそうに、本当に嬉しそうに小春先輩のことを話すユウジ先輩をジロリと見る。

「なんや光、小春に対抗すんのか? ハハッ、あかんて、小春の方がかっこええ」

本人に自覚はないだろうが、心臓を抉るような言葉。

「まァ、でも女子の目から見たらお前の方がかっこいいんやろな。モテんねやろ?」
「ま、当然っすわ」

覗き込まれた顔をさりげなく逸らす。

(あんたにモテな、意味ないねん)

俺の心と言葉は裏腹。
ユウジ先輩は裏も表もなにもない。
まっすぐ、純粋に好きな人に焦がれている。

「……先輩ほどかわいい人はおりませんわ」
「そうやろ? 小春はかわいい上にかっこいいんや」
「もー腹いっぱいっすわ」

ユウジ先輩の半分でも素直になれたら、こんなに苦しまなくて済むのだろうか。

否、勇気の欠片もない俺に、そんなこと出来ようはずもなかった。

ただ、叶わぬ思いに焦がれるばかり。


臆病者

一番簡単な、その言葉を言えない俺は臆病で、卑怯で。
ああ普通を辞めたくない詰まらん奴なんやと、

我ながらに肚が冷えた。


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