春。 この惑星の駅と呼ばれる場所では、出会いと別れが繰り返されている。 田舎の片隅にある寂れた駅。 そこには二組の男女と、駅員に扮する宇宙人チョージ。 「どうしても…行くのか」 目の下に隈を作った男が、赤い目の少女に言う。 「ごめんなさい…」 少女は切なげに微笑む。 離れたくない。その感情がありありと見て取れた。 しかし無情にも笛は鳴り、扉が二人をわかつ。 「…どうしても、行くんだ」 目元が涼やかな少女が、柔らかな茶の髪を持つ男に言う。 男は窓から体を出し、苦しそうに唇を噛み締める。 だが時間は二人を待たない。 「出発進行…」 男と少女、二人を乗せた電車は走り出す。 「私なんかよりも、ずっといい人が見つかりますから!」 少女は男へ、必死に伝える。 「ごめんねー!!」 男は少女へ、想いを叫ぶ。 「伊作っ!」 少女は最後に彼の名を呼び、男は耐えるように少女を見送った。 春。 出会いと別れが繰り返され、人々は大抵、悲しみと痛みを伴う別れを拒む。 恋人であれば尚更だ。 ただ、この惑星では… 「…よしっ」 「きゃっ!」 少女の履いた靴のヒールが突如折れ、バランスを崩した少女を男が受け止める。 男と少女の、瞳がぶつかる。 男が、口火を切った。 「付き合ってる奴は…」 「いません」 別れないと、出会えない。 「よしっ…」 春よ〜 遠い春よ 瞼 閉じればそこに〜 このろくでもない、素晴らしい世界に。 缶コーヒーのSHINOBI URA MAUNTEN 後書き:反省はしても後悔はしていない。 ずっとやりたかったので大変満足! このシリーズ大好きなんですww |