通学用に新しいリュックが欲しい。 そう留に強請られ、今俺と留はリュックを見にアウトレットの一角に来ている。 それにしても、色んな種類がある。 鞄なんてどれも同じだと俺は思うが、女の子である留は事情が違う。 こういう鞄一つ取っても、色々気をつかうらしい。 俺にはいまいち分からんが、可愛いものや洒落っ気があるもんを持ちたいと思うのは女の子の道理だろう。 まぁもっとも、キラキラと目を輝かせ、楽しそうに吟味している留を見れただけでも、来て良かったと思うがな。 ふと、俺の目にある鞄が目に入る。 素材はフェイクレザーで、形が少し変わっている鞄だ。 リュックはもちろん、斜めがけにしたり手持ちにしたりできるらしい。 色は六種類あったが……多分白だな。 俺は留を呼び寄せた。 「なに、お父さん?」 「ああ、これなんてどうだ?」 「これ?へぇ、変わってるね」 どうやらお気に召したらしく、しげしげと眺めている。 「そーだなー…この中なら…」 「白が好きだろ」 言うと、留を目をまん丸くして俺を見た。 驚きからか、口をぽかんとさせている。 「え…なんで分かったの?」 やっぱりな。 自分の予想が的中したことが、思った以上に嬉しかった。 驚きの表情と相俟って、口角が上がるのを抑えられない。 留は基本的に明るい色が好きだ。 明るめのブラウンやベージュを選ぶことが多いが、これの場合はくすんでおり微妙だ。 逆に白は柔らかくまろい色合いで、白の場合はこういうのを好む。 今までの傾向をはかれば分かることだ。 「お前の好みぐらい分かるさ」 俺が言い放つと、留は僅かに顔を赤くさせ、俯いた。 「う、こ、これにする!」 留はその白の鞄をひっつかみ、会計へと足取り早く行ってしまった。 好みを言い当てられ、恥ずかしかったのか、髪から覗く耳は赤かった。 (知っててくれて嬉しい、なんて言えないよ!) 後書き:好みを父に当てられたのが実話です。 ネットで選んでいたんですが、白がいいと言うと母が、「お父さんの予想通り」と言われ、少し恥ずかしかったのを覚えてます。 留の場合、把握しててくれて嬉し恥ずかしといった所(笑) |