・ここまでのあらすじ(?) たちの悪い酔っ払いに絡まれていた所を、文次郎に助けられた留三郎。 その際、留三郎は文次郎に一目惚れをしてしまう。 しかし文次郎には軽くいなされ、中々伝わらない。 それでも一途な留三郎に、だんだんと文次郎も惹かれ…。 「俺は本気だ!そ、そりゃあ潮江さんから見たら子供かもしれないけど…!」 俺のYシャツの裾を握り締める、留三郎の手は震えていた。 …不器用な子だ。全身でぶつかることしか分からない。 愚かな程真っ直ぐで、曲がり道をしらない子供だ。 でもだからこそ。 俺には眩しかった。 留三郎は昔の俺に似ている。 心から好きだったのに、結局結ばれることなく死んだあの人を追いかけていた俺に。 年の差。 愛に年の差なんてとよく言うが、実際は大きな障害だ。 ましてや男同士で、俺なんかいい年したおっさんだ。 けれど留三郎は。 「それでも、潮江さんのことが好きなんだ…!」 こうして、障害を軽く飛び越え俺を好きだと言う。 ああ、なんて愚直で。 愛しいのだろう。 俺は、そのまま留三郎を抱き締めた。 すっぽりと腕の中に納まる留三郎の身体は、突然抱き締められたことに驚いたのか少し強張った。 が、すぐに弛緩して、おずおずと俺の背中に腕を回した。 「し、潮江さん…?」 戸惑う声が鼓膜を震わす。 「……本当に、俺でいいのか」 少し身体を離して、目を合わせる。 驚きと困惑からか、ゆらゆらと瞳が揺れる。 「俺は、一度掴んだら離せないんだ。その上で聞く。俺が、お前を、」 留三郎の瞳にうつる俺が、揺らいだ。 「捕まえてもいいか」 これでもかと見開かれた瞳は、やがて歓喜に染まりながら細められた。 満月より、三日月のように。 背中に回されていた腕は、首に巻きついた。 緩やかに弧をえがく唇は、熟れた果実のように赤かった。 「はやく、捕まえて…」 その声に誘われて、俺は目の前の赤を貪った。 口にした果実には毒が孕んでいる。 一度それを口にすると、人は皆溺れて、愛の虜囚となり果てる。 果たして、捕らえられたのはどちらなのだろう。 後書き:これおっさん文次郎の意味、あるかな? もっとこう、くたびれてて余裕があってアダルティックな雰囲気にしたかったんだが…。 うーん。課題だな。 おっさんいいよおっさん。 老成した空気がたまらん。 誰か賛同して下さい。 お願いします。 |