「あいつが…俺のことを好きな訳ないよな…」 そんなことはない!と否定したくとも、今俺の喉から出るのは細い猫の鳴き声だけだ。 いつしか留三郎の瞳から涙が零れ始めた。 慌てて俺は文机に飛び乗り、頬に伝う涙を舐めた。 少し、しょっぱい。 留三郎が少し驚いた顔をした。涙は、止まったようだ。 「なんだ、お前。慰めてくれるのか?」 優しいんだな、と呟いた留三郎は、俺を抱き上げた。 ふと、目が合う。 「お前…目の形が左右で違うのか。ますますあいつそっくりだな」 吹き出して、小さく笑う留三郎。 だがそれも束の間で、すぐに悲しそうに顔が歪む。 留三郎が、俺を抱き締めた。 少し苦しかったが、甘んじて抱き締められていた。 「……文次郎…」 切なげに呟かれた名の方が、余程苦しかったから。 朝。 鳥の声に反応して目覚める。 目の前には、目元を僅かに赤くした留三郎がいた。 抱き締められたまま眠ったから当然だが。 そこまで考えて、あることに気がつく。 体を見下ろせば、猫ではなく、元の姿に戻っていた。 どうやら一日だけのことだったらしい。 そのことに心底から安堵のため息をついた。 …真っ裸だが。 「んんっ……」 留三郎が小さく唸り、ぼんやりと目を開ける。 目を覚ましたらしい。 「…おはよう」 とりあえず、挨拶だけする。 留三郎は何回か目を瞬かせた後、目を見開かせた。 「は、え、な!?え、モンジローは!?」 完全にパニックを起こした留三郎を、強引に抱き締める。 そして耳元に口を寄せた。 「一回しか、言わねえからな」 そして猫は、愛を鳴くのだ。 後書き:てな感じです。 因みにモンジローは猫文次郎に留三郎が命名した名です。 とりあえず満足(笑) |