その日は会社の都合で、昼には家に帰れることになった。 俺は留を驚かせようと、連絡をせずに帰ることにした。 家の近くまで行くと、家の前にタクシーが止まっている。 そのタクシーから、ケーキの箱を持った留三郎が降りた。 俺に気づく様子はなく、家の中に入っていった。 俺は家に上がって、どのタイミングで出よう伺った。 留というと、どういう訳か上機嫌な様子で手の込んだ煮込み料理を作り始めた。 昼間から手の込んだ料理を作る時は、なにかの記念日ぐらいだ。 生憎俺には思い当たる記念日がない。 どちらかの誕生日でもなければ、結婚記念日でもない。 結局俺は驚かすことはやめ、後ろからそっと声をかけた。 振り返った留は目を見開いて俺を見た。 と、思ったら途端に泣き出して俺に抱きついた。 「どうしたんだ?」 俺は慌てて声をかける。 「今日は、早く帰って来て欲しかったから」 珍しい。普段はそんなことを言わないのに。 留は俺を見上げて、なぜか嬉しそうに微笑む。 「あのね、」 子供できたの 言葉の意味を理解した瞬間、俺は留を力一杯抱きしめた。 柄にもなく、少し泣いた。 結婚して三年。 そろそろ子供も欲しいと思っていた頃だった。 驚かせようと思ったのに、まさかこんな形で驚かされるなんて思わなかった。 別に神様を信じている訳じゃないが、この時ばかりはこいつと巡り会わせてくれたことと、子供を授かれたことに頭ついて感謝したくなった。 という訳で、夫婦で妊娠ネタでしたー。 苦手な方はごめんなさい。 書くとネタバレになっちゃうから…。 あと二人に合わせて色々改変してあります。 きっと文次郎は言葉に出さなくても心底喜ぶんだろうな。 |