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修行少女と捜索する者


折角ヴァリアーにいるんだから、もっと強くなりたい。そう思いスクアーロに頼んで、修行に付き合ってもらっていた。しかし流石ヴァリアー。強い。私はまだまだ未熟だと自覚させられる。

「う"ぉぉぉい! まだまだアメーぞぉ! 隙を作るな」
「……っ」

「ししっ。よっえ〜」

鬱陶しい笑い声が聞こえた。動きを止め声がした方を見ると自己中王子が城の窓から此方を見て笑っていた。

「何だぁ」
「ボスが呼んでるぜ」
「チッ、そうか。じゃあディアナ、また後でな」

ボスが呼んでるなら仕方ないか。コクリと頷きスクアーロにお礼を言うと、自己中王子が「じゃあ王子が相手してやろうか?」と言ってきたので、驚いて声を上げてしまった。

「戦い方が似てるだろぉ。ベルに相手してもらえ」
「や、やだ……」
「教えてもらえるうちに付き合ってもらった方がいいぞぉ。アイツは気まぐれだからなぁ」

確かに戦闘タイプは似てる気がする。でもこの自己中王子に修行に付き合ってもらうなんて、何か嫌だ。それに殺されかねない。自己中王子をジロリと見ると、白い歯を見せて笑っている。絶対殺す気だ。

「で、どうすんの」
「………………よろしく、お願いします」
「ししっ。始めから素直にそう言えよ」

殺されないように頑張らなきゃ。


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キャバッローネから電話が入った。

「ディアナがいねぇんだ!」
「えっ? ディーノさんの妹さんですか?」
「そっちに行ってねぇか!?」
「いえ。こっちでも確認してみますね」
「頼む!」

急なディーノさんからの電話に驚きながら受話器を置くと同時に、リボーンが部屋に入ってきた。

「何かあったのか」
「ディアナちゃんが行方不明みたいだよ」
「あのちんちくりんが」
「こっちに来てないよね。もしかしたら何処かのファミリーに捕まってるかも……」
「此処には来てねぇな。その可能性もあるが、同盟ファミリーへの確認が先だな」
「だとしたらヴァリアーに……あそこは無いかな」
「いや、確認だけでもとってみろ」

流石にあの子がヴァリアーに匿ってもらうなんて、あり得ないだろう。でもリボーンと言い合う様子を見てみると、ヴァリアーでもやっていけるだろうな、とは思う。ヴァリアーに電話をかける。はぁ、緊張するな。

「う"ぉぉぉい! 誰だぁ!」

……煩い。電話に出たのは言わずもがなスクアーロだった。

「沢田です。いきなりで悪いんですが、そっちにディーノさんの妹のディアナちゃん、来てませんか」
「……いや知らねぇなぁ」

やはりヴァリアーは関係ないか。他をあたろう。

「そうですか。ありがとうございました」
「あぁ」

電話を切ろうとした瞬間、電話の向こう側で爆発音が聞こえた。

「本当に爆発させたんだけど!? あり得ない! なにこの堕王子!」
「しししっ。時間切れ〜」

「今のは……?」
「チッ。新人の教育だぁ。気にすんじゃねぇ」

そして一方的に電話を切られた。顎に手を当て考える。女の子の声、あの口の悪さ。恐らく探していた彼女だ。

「ヴァリアーだ。あそこに彼女がいる」
「ふん。意外だな」

キャバッローネに電話を掛けようとすると、リボーンに止められた。リボーンの予想では、兄妹喧嘩でディアナちゃんが家出した為、兄が連れ帰ろうとしても逃げるだけだと。それなら惚れたと言っていた雲雀さんに迎えを頼もうか。……いや、彼はそんなこと引き受けてくれないだろうな。

「とりあえず手の空いている者にあの子の迎えを頼もう」
「にしても暗殺部隊に逃げ込むとは面白い事になりそうだな」


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暫くの間、自己中王子との修行をしているとスクアーロが戻ってきた。真剣な表情をしていた為、二人とも動きを止めた。よって飛んでいたカードやナイフがその辺に散らばる。

「う"ぉぉい、ディアナ。ボンゴレにバレたぞぉ」
「は? ばっ、バレたって」
「お迎えが来るって事じゃねーの?」

「そういう事だ」
「誰が迎えに来ようと絶対帰らないから!」
「どうするかはお前が考えろぉ」
「おんもしろい事になってきた。しししっ」

楽しそうに笑いながら城へ入っていった自己中王子。どうしよう。誰かが連れ戻しに来るって事だよね。此処にいるってことがバレたんなら、場所を変えよう。よし、逃げよう。

「逃げるなんて考えてねぇよなぁ?」
「うぐっ……」
「ボスと契約しただろう。お前がヴァリアーで力を使う代わりに匿ってやるってなぁ」

そうだった。ボスがそう言ってたんだ。それにあの人怖いし、また逃亡したら命はないかもしれない。

「大丈夫かなぁ」
「まぁボスさんが何とかするんじゃねぇか?」
「ほんと信じてるからね」

ボスのいる部屋の窓を外から二人で見る。そして溜息を吐いて城の中へと入る。ナイフで切れた頬や腕が地味に痛いので、治療しに行こう。

医務室に行くと、大きな蛙がいた。

「ミー、カエルじゃないんですけどー」
「それのどこが蛙じゃないって言えるのさ。何、アンタも怪我してるの?」
「ミー、アンタでもないんですけどー」

救急箱を棚から取る蛙頭は、相変わらず無表情だった。この蛙は何を求めているのだろう。……あ、もしかして。

「はいはい。フランね」
「名前覚えてたんですね。意外ですー」

まぁね、と言いながら切られたところに消毒と絆創膏を付ける。

「見てましたよー」
「えっ、あぁ。さっきの自己中王子とのね」
「ミー的にはもっと下半身を鍛えた方が良いかと思いますー」
「っ! そう。ありがとう参考にする」

何だ。毒舌で生意気な嫌な蛙かと思ってたけど、そうでもないみたい。

「暫く此処にいるつもりなら、もっとディアナには強くなってもらわないと足手まといになって困るんで」
「んんんー?」

前言撤回。やっぱりムカつく。でももしかして今、名前呼んでくれた?




修行少女と捜索する者




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