語る少女と笑う鮫
何だこれ、何か変な感じ……殺気!?
「っ!」
バッと目を開けるとナイフが振り下ろされている瞬間で、それを即座に避ける。目を覚まさなかったら死んでた。
「なーんだ。起きたのかよ」
「ふっざけんな!」
武器のカードを取り出してこの堕王子に投げるが、華麗に避けられる。何なのこいつ。
「ていうか何で私の部屋にいるの!? 鍵ちゃんと閉めたのに」
「しししっ。だって俺王子だもん」
「……うっざ」
「お前ほんと生意気。王子がわざわざ起こしに来てやったのにさ」
「殺しに来た、の間違いでは」
部屋だからって気を抜けないな。窓の外を見るともう日が昇っている。そろそろ準備をしようか。今日はスクアーロにこの辺の事を色々と教えてもらえるらしい。城の外に広がる森にも慣れておかないと今後逃亡した時に不便だ。逃げたら殺すってボスに言われてるけど。
ここに住み着くとなれば着替えもいるし、色々と必要な物を買っておかなければならない。面倒だ。う"ぉぉい!ディアナはまだかぁ!と大きな声が聞こえた。
「うるせっ」
「アンタの上司でしょ。静かにしてくれって文句言ってきて」
「めんどくせー。お前が言ってこいよ、ペーペーだろ」
「まだかぁ! おせーぞディアナ!!」
バンッと大きな音を立てて部屋に入ってきたスクアーロ。ノックもなしかよ。
「うるせーよ。ボスの銃で撃たれて死ね」
「んなぁ!?」
「って、この自己中王子が言ってました」
「ベルてめぇ……」
「ふざけんな言ってねーし。このペーペー、どっかのウザい蛙とそっくり」
あんな蛙と一緒にするのはやめてほしい。スクアーロは溜息を吐いて、行くぞと言って部屋から出て行った。私も部屋を出て行こうとすると、後ろからナイフが飛んできたが特に大きな反応もせずに避けた。
城から出るとスクアーロが車を用意していた。周りには部下も誰もいないし、二人きりらしい。運転もしてくれるようだ。そもそも私は車の運転をした事がないから、任せるしかないけど。車を走らせて森を抜けると、スクアーロが沈黙を破った。
「何故ファミリーから抜け出してきたんだぁ」
「別にかん「関係ないはなしだぞぉ。お前もヴァリアーに入ったんだからな」……」
小さく舌打ちすると軽く拳骨が落とされた。痛いんだけど。
「……兄と喧嘩したの」
「お前は大空より雲の波動の方が強いからとか言うアレかぁ?」
「それは別に……。私は兄みたいにボスになるつもりはないし」
一度悩んだ事もあったけどね。何故兄は大空、私は雲なんだと。でも抜け出した原因はそれじゃない。
「別に言いたくなければ無理に聞かねぇが、話に聞くと跳ね馬はお前の事溺愛していたらしいからなぁ」
「…………口外しませんか」
「別に他の奴らに話しても興味ねぇだろ」
これからヴァリアーに世話になる以上、誰かに話さなければならない。私は車の窓から空を見つめ話し始めた。
それは最近の出来事である。キャバッローネの同盟ファミリーであるボンゴレとパーティを開くことになった。特に難しい話もしない小規模なパーティ。最近では私は体調を崩す事もないのでそのパーティの参加を許してもらえた。今迄はずっと部屋の中にいる事が多かったため初めての人と関わるのが緊張する。ボンゴレでも知っている人と言えば、兄の家庭教師だったリボーンくらいだ。
そのパーティで出会ってしまったのだ。私の好み、ドストライクの人に。話しかけてみると、態度も良い、声も良い。やっぱり顔も良い。私はボンゴレの人に一目惚れしてしまった。
それを兄に言ってしまったのが間違いだったのかもしれない。結婚したいなんて一言も言ってないのに、ディアナに結婚なんてまだ早い、と怒られた。端から見ても分かるようだが、私の兄はシスコンらしい。人の恋路を邪魔する奴は、馬に蹴られて死んじまえ! ってね。跳ね馬だけに。
「で、ムカついたから黙って家出したの」
話し終えるとスクアーロは肩を震わせていた。何なのこいつ。
「それだけで、ファミリーを抜け出してきたのかぁ」
「私にとっては重要なことなの」
「もっと重い話かと身構えていたが、ちっせー話だな」
「うざい」
「でもよ、自由に憧れてたんだろぉ?」
「……うん。やっと私は自由に戦える」
「まだクソよえーけどな」
「ハァ?」
とてもウザかったので、その日は欲しいもの全部スクアーロに買ってもらった。
語る少女と笑う鮫
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