×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -

もし立海レギュラーとクリスマスを過ごしたら




季節ももうすっかりと冬となりマフラーに手袋といった防寒具は欠かせない。息を吐くと白く見え、朝から雪が降っていて寒い。一人登校していると見たことのある後ろ姿。あれはきっと柳と赤也だろう。スラっとした長い脚や良いスタイルが後ろから見てもイケメンだ。ていうか、ふわふわの耳当てをしている赤也がとても可愛い。

声を掛ける勇気もなくじっと後ろから見つめていると、不意に振り向いた赤也と目が合った。


「名前!」

ちょいちょいと手招きするので小走りで二人に近づくと、間を開けてくれたので二人の真ん中を歩くことになった。


「声を掛ければいいものを」

『どうやって声を掛ければいいか……分からなくて』

「普通に挨拶すればいいじゃん」

『うぅ……』

「苗字にそれができない確率84%ってとこだな」

「ふーん。そうだ!柳先輩、名前も誘いましょうよ」

「ふむ、それは良い考えだな。精市に言っておこう」

『?』


話を聞くとどうやらレギュラーはクリスマス、部室でクリスマスパーティーをするようだ。元の世界では毎年家族と過ごしていたが男となんて一度もない。別にクリスマスは用事があるわけでもないが、友達といっても立海テニス部だ。緊張しない訳が無い。それに男だけのクリスマスパーティーを邪魔したくないという気持ちもある。




********************


昼休みになるとブン太とジャッカルが私の教室に顔を出し、食堂へと来るように言った。今は外が寒いから屋上では食べてないんだな、等と考え事をしながら二人について行った。

因みにさっきまでいたチーちゃんに謝ろうと振り向いたが、既に他の友達と仲良く話していて目が合ったと思えばウインクされた。いや可愛いんだけれども、何だこのどこかイラっとする感じは。少し寂しい気持ちになりながらも私は歩を進めた。


食堂につくと沢山の女子の視線の先でレギュラーがどこにいるかすぐに分かった。今からあそこに行くのかと思うと今すぐ逃げ出したくなる。ていうか逃げよ「ガシッ」

「名前の逃げるタイミングが分かってきたぜぃ」

『うぅ……』


ブン太に腕をがっちり掴まれて逃げれなくなった。くそぅ、やられた。横でジャッカルに「すぐ終わるから、女子の視線には我慢してくれ」と申し訳なさそうに言うものだから、ジャッカルに免じて許すことにする。とは思ってみるが、やはり女子の視線が怖い。

何の取り柄もない平凡な女子がブン太に引っ張られ、レギュラーの中に入るんだから女子も黙っているわけがない。コソコソと私の愚痴を言ってるんだろうなぁ。私はクリスマス前に死ぬのかな……この女子の視線で。


「やぁ苗字さん。クリスマスパーティーの話は聞いたとは思うけど、クリスマスは予定あいてるかな?」


『あいて、ます……でも』


「何かあるのかい?」

『その、私が……入ったら、折角の「レギュラーだけのパーティの邪魔になるのではないか、とお前は言う」』

「あぁ、それなら皆歓迎してるよ」

「苗字さんが良ければ是非来て下さい」

「うむ、苗字が来れば皆喜ぶだろう」

「じゃあ真田副部長は喜ばないんスか?」

「そんな事は言ってない」


「で、どうかな?」

体制を低くし上目遣いの幸村君がキラキラした目で見つめてくる。私キラキラビームには弱いんだって……!斜め前の席の柳が口角を上げているのを見たところ、柳が幸村君にキラキラビームが私の弱点だと教えたな。私は何とか平然を保とうとするが、多分顔が真っ赤だろう。すると周りから「ガタッガタ」と聞こえたので見渡すと、近くにいた女子が椅子から崩れ落ちたみたいだ。幸村君恐るべし。

『めめめ迷惑で、なけ……れば』

「じゃあ決まりだね」

「名前!ケーキもあるから楽しみにしとけよ」

『は、はい』


これ以上女子の痛い視線は受けなくないので、頭を下げこの場を去ることにした。

クリスマスまであまり日はない。どうやらプレゼント交換をするらしいので、プレゼントを一つ持っていかなければならない。中学生の男子が欲しい物って何だろう。でも、やけに大人びてる人も多いしすごく悩むなぁ。





********************


クリスマス当日、外を見ると雪が降っていてとても寒そうだ。

パーティは昼からだが少し早めに行こうとプレゼントを持ち玄関のドアを開けると、正面の家のドアもタイミング良く開いた。

「あ、おはよう。苗字さん」

『おは、ようご……ざいます』

「今から学校に行くのかい?」

『はい』

「ちょっと早いし遠回りして行かない?」

首を縦に振ると幸村君はニコリと微笑み、私の手を取った。

『えっ……せ、先輩!?』

「クリスマスなんだからいいだろう?」

クリスマスだからという意味が分かりません!繋がれた左手から幸村君の体温が伝わり、顔が熱くなる。

「ふふ、本当に男慣れしてないんだ。今ここで抱き締めたらどうなるんだろうね?」

で、出たドS。頭を左右にブンブンと振るとまた笑われた。中学生に遊ばれる私って……。


人通りの多い道に出るとクリスマスソングが流れていたり、可愛い飾り付けでクリスマスカラーに染まっていた。

『わぁ……!』

「ふふっ、綺麗だね」

『はい』


「そこのカップルさん!これどうぞ〜」

どこかの店の店員さんが小さなサンタの帽子を二つ、私たちに渡し他のカップルの方へ走って行った。


「……カップルだって」

『うわぁ!ご、ごめんなさい』

「それも悪くないね」

よく分からない言葉を発し、幸村君は店員さんに渡されたサンタの帽子をかぶった。「苗字さんもかぶりなよ」と嬉しそうな笑顔で言う。その綺麗な笑顔に見惚れながらも帽子をかぶる。

な、何これすごく良い雰囲気。こんな雰囲気に慣れてない私は恥ずかしくなって、顔の熱が冷めるように頭を左右に振っていると、幸村君は笑いながら学校の方へ歩を進めた。





********************


部室のドアを開け部室に入ると、ブン太にジャッカル……いや、いない人を数える方がいいか。いないのは柳生と仁王だった。


「部長と名前が来たっス!」

「待ってたぜぃ!ってその帽子どうしたんだよ?」

「ここに来る途中でカップルと間違えられて貰ったんだよ。ね、苗字さん」

『えっ、とはい』


幸村君の言葉を聞き、目の前のブン太は口をポカンと開けながらも眉を寄せていて間抜けな顔になっているし、少し離れた場所からは「ガタガタ」と聞こえるし、そんなに私が幸村君とつり合ってませんかそうですか。



「すいません!遅れました」

「もう全員揃ってるぜよ、柳生」

突然後ろにあるドアが開き柳生と仁王が入ってきた。柳生は少し大きめの袋を持っており中には箱が見えるので、多分ケーキが入っているのだろう。


「……なんじゃ?この空気は」

「さぁ。じゃあケーキもきたことだしパーティを始めようか」


幸村君の合図により皆はテーブルを囲んで座る。どこに座ればいいのか分からなかったが、真田と赤也の間があいていたので静かに腰を下ろした。壁には少しだが飾り付けがしてあり、端の方には小さなクリスマスツリーが置いてあった。



柳生がケーキを切り分け私の前にもケーキが置かれる。そして幸村君が数本の棒が入った箱を持ってきた。

「よーし、やろうか!王様ゲーム」

「「「「おー!」」」」


クリスマスに王様ゲーム!?普通は合コンとかでやるものじゃないの?深くツッコむのは止めておこう。王様ゲームのルールは知ってるけどするのは初めてだなぁ。


王様だーれだ、と皆が棒を引く。
私は……三番。


「私ですか」

そう言ったのは柳生。どうやら柳生が王様の様だ。

「では一番が四番の良いところを言う」

一番は仁王、四番がブン太みたいだ。ブン太は期待した目で仁王を見る。



「よく食う」

ぷっ、と吹き出す音が周りから聞こえた。

「他にあるだろぃ!妙技が天才的とか!」

「さー、次いくかのぅ」

「スルー!?」

このやりとりに笑いながらもう一度棒を引く。


「あ、王様だ。じゃあ五番が七番の頬をつねる」

ジャッカルがそう言うと指定された番号に当たったであろう両隣の二人が反応した。

「うげっ!俺七番なんスけど!」

「では赤也、頬を貸せ」

「さささ真田副部長!?

〜〜〜っ!!いってぇ!」

あーあ、可哀想……。真田は赤也の頬を思いきりつねった。王様のジャッカルも苦笑いになっている。


「真田副部長ひっでぇ」

『……大丈夫、ですか?』

「いてぇ……」

口を尖らせ、つねられた頬を両手で摩ってる赤也がとても可愛い。



そしてまた棒を引く。


「今度は俺が王様ぜよ」

仁王がニヤリと笑い王様と書かれた棒を此方に向ける。

「二番と六番がハグ」

『…………』


何でこういう時に番号に当たってしまうの。



「顔から見て六番は苗字だな」

そう言って二番の棒を持っているのは柳。こくりと頷くと柳は私に近づいて来て……


ーーーーギュッ


「フッ、これでいいか王様」

「プリ。いいぜよ」


……恥ずかし過ぎて顔を上げれない。異性とハグなんて私は顔を赤くせずにはいられないのに、柳は何であんな涼しい顔が出来るのだろうか。ハグなんて無理です慣れてません。柳、身長高いから私の体がすっぽりと収まって心地よかった……ってダメダメ、また変態扱いされる。



また棒を皆が一斉に引く。どうやら次で最後にするらしい。



「あ、俺だ」

そう幸村君が呟いた瞬間、この場の空気が一瞬凍った気がした。私も思わず身構える。両隣の真田と赤也を横目で見ると冷や汗を垂らしている。何故最後に王様になるんだ。流石魔王様。


「じゃあ一番と二番が年明けの部活の日に俺と試合。三番と四番が今から漫才。五番が今から逆立ちで……「ちょ、ちょっと待て幸村」」

「ん?何真田」

「もしや全員分あるのか?」

「そうだけど何か問題でもある?」

「王様というのは、命令できるのは二人までじゃないのか?」

「そんなの誰が決めたの?俺が王様なんだからいいよね、皆?」


「「「「は、はい!!」」」」

幸村君以外のその場にいる全員が頭を縦に振りながら答えた。これ、王様ゲームじゃなくて魔王様ゲームだ。

「じゃあ続けるね。六、七番は三回まわってワンで残りは秘密を暴露」


良かった、私七番だ。いやよくはないけど漫才やるよりはマシだ。


顔を青ざめている真田とジャッカルが試合相手に。赤也と柳生が漫才、柳が逆立ちで私とブン太が三回まわってワン。仁王が秘密を暴露。



この魔王様ゲームの命令を全てクリアした後、私達はプレゼント交換をした。プレゼントは散々迷った挙句、白く塗られたテニスボールに可愛い飾り付けのしてある、雪だるまの形をした置物になった。どちらかといえば女子には喜ばれるかもしれないが、男子にはどうだろうと悩んだが結局他に良いものも決まらずこうなった。


電気を消しプレゼントの順番をバラバラにして、音楽にのせてプレゼントを左から右へ回していく。音楽が止まった時手元にあったプレゼント。
何が入っているのかが楽しみでしょうがない。


「今開けてもいいっスかー?」

「うん、開けようか」


プレゼントの包装紙を綺麗に破ると大量のお菓子。……誰からのプレゼントかすぐ理解出来た。私のプレゼントは誰にいったのか見ると柳生の手元にあった。


「柳生の貰ったプレゼントは可愛いな」

「えぇ、テニスボールを雪だるま風に作ってるのですね。桑原君は何を貰ったのですか?」

「大きいケーキの帽子。多分仁王だと思うんだけどよ」

そんな会話が聞こえてきて頬を緩ませていると横にいる赤也が声をかけてきた。

「うわっ、これぜってぇ丸井先輩じゃん」

『た、多分』

「ん?あー、俺おれ。年末お菓子食い放題だろぃ」

「……食い過ぎんなよ」

呆れたような目でブン太を見た後、私に視線を戻し苦笑いで言う赤也。

他のプレゼントは小さなクリスマスツリーや大きな靴下等、みんなの反応が面白かった。



そしてクリスマスパーティーは夕方に終わり、冬休みで部活をしていなかったせいか皆テニスがしたかったらしく、最後はテニスをすることになった。私は寒いので帰宅すると伝え、皆と学校で別れることとなった。


「どうだい苗字さん。今日は楽しかった?」

『はい、とっても』

「じゃあまたな、苗字」

『はい。ありがとうございました』

校門まで送ってくれた幸村君と柳と別れ、私は学校を出た。



家族以外とのクリスマスパーティーなんて生まれて初めてで、周りは男子ばかりだったが、今日はとても楽しい一日だった。私は表情を緩ませ貰った大量のお菓子を持って家に向かうのであった。




もし立海レギュラーとクリスマスを過ごしたら


|back|