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この数値は何ですか?




ナミが育てている蜜柑の木の近くに、赤い実が落ちていた。蜜柑ではないし何だろうと思いながら拾い上げる。さくらんぼに似ているけど、一体何処から。空を飛んでいた鳥が落としたのだろうか。
匂いを嗅ぐと甘い匂いがして美味しそうだったので、パクリと口に入れたら甘くて美味しかった。他には落ちてなさそうだったので実を探すことは諦めてトレーニングジムへ向かった。

「筋トレやってるー?」

ジムの中はゾロの汗の匂いで充満していて、彼は真ん中で大きなバーベルを持ち上げていた。筋トレ真っ最中で魅力的な筋肉に涎が垂れた。私に気づいたゾロが口を開く。

「足元、気をつけろよ」
「足元?」

足元を見るとトレーニング器具があちらこちらに置いてあって、気づいた時にはバーベルに足を引っ掛けて転んでしまった。
上半身を起こしながら床にぶつけた額を摩る。ゾロは筋トレを中断して私の方へと歩いてきた。

「鈍臭ェな。大丈夫か?」
「ウゥゥ……素敵な筋肉」

溜息を吐きながら差し出してくれた手を取ろうとしたら、汗で滑って彼の胸筋から腹筋に一瞬触れてしまった。そこで一つ違和感に気付く。何か文字が浮かび上がったような。首を傾げる私にどうしたとゾロが聞く。

「何か、文字が……」
「文字?」
「うん。腹筋ちょっと触らせて」
「ハァ?」

ちょんとゾロの腹筋に触れると数字が浮かび上がった。

「この数字なに?」
「なにって何がだよ」
「数字見えない?」
「何も」

ゾロは不思議そうな顔をするので嘘はついてないみたいだ。私にしか見えていないのか。何だろう、900って。腹筋の上に半透明の数字が見える。

「今日900回腹筋した?」
「いやしてねェが。なんか見えんのか?」
「うん。900って数字が見える」

腹筋以外も触ったら何か別の数値が見えるのだろうかと、確かめるようにペタペタと彼の身体を触っていると怒られた。
何かの数値が見れるのは腹筋を触った時だけらしい。何だろうこの数値は。自分のお腹に手を当てても何も出てこないし、ゾロだけ? 他の人のも見れたりするのかな。

「オイ、何なんだ。数字が見えるなんて訳わかんねェこと言ったかと思えば、人の身体ベタベタ触りやがって」
「何だろう……。ちょっと他の人の腹筋も触ってくる!」
「オイ!」

ゾロが何か言っていたがスルーしてジムから出て甲板に下りると、ウソップがいたので声を掛ける。

「ウソップー!」
「おっ、どうした?」
「腹筋触らせてー!」
「いきなりだなオイ。おれの腹筋は高いぞー」
「失礼しまーす」
「強引!」

ペタリと彼の腹筋に触れると600と数字が出てきた。ゾロが900でウソップが600。……何の数値か分かったかもしれない。ウソップにお礼を言って船首の方へ走る。

船首に座るルフィを呼ぶと、腕を伸ばしてこっちに飛んできてくれた。
私の予想が正しければ、きっとルフィは2人の間の数値が見えるはず。

「なんだ? 飯か?」
「ご飯はまだなんだけど、腹筋触らせてほしいなって。ちょっとだけで良いの」
「おう、いいぞ!」

よし来いと胸を張る彼の腹筋を指先で触ると700と出てきた。

「やっぱり……」
「やっぱりってなんだ?」
「腹筋を触ったらその人の筋肉量が見えるようになったかもしれないの」
「筋肉量? それって見れて嬉しいのか?」
「うん、とっても!」

でも何で急にそんなのが見えるんだというルフィの問いに首を傾げた。そういえば何でだろう。

「悪魔の実でも食ったのか?」
「実? ……あっ! さっき小さな実は食べた。甘くて美味しかったんだけど、もしかしてあれ悪魔の実だった!?」
「悪魔の実は不味いから違うと思うわ。それに筋肉量が見える能力なんて聞いたことないけど」

どこから話を聞いていたのか、2階からロビンが下りてきた。悪魔の実を食べたわけではなくて安心した。

「悪魔の実って不味いの?」
「ええ、とても」
「スッゲー不味かったぞ」
「そうなんだ。あっ、ロビンの腹筋も触っても良い?」
「ええ。もし貴女が見えている数値が筋肉量なら私が一番低いはずね」

ルフィとロビンがどうだと聞いてくる。おかしい、ロビンの腹筋の上には800という数値が浮かび上がっている。

「800……」
「おれより上だな」
「筋肉量ではなさそうね」
「違うんだ……」
「ショックを受けているところ悪いけど、皆の数値を教えてくれる?」
「ゾロが900、ウソップが600、ルフィが700、ロビンが800だよ」
「そう……」
「麗しのレディ達、デザートをお持ちしました」

サンジがデザートを持って現れた。今話していた内容を彼に話し、腹筋を触らせてもらえることになった。失礼しますと言いながらサンジの腹筋を服の上から触る。見えた数字はゾロと同じ。

「900だ」

私を含めて皆が首を傾げる中、いつの間にか近くに来ていたゾロが同じかよ、と呟いた。

「なんか言ったか? クソ剣士」
「テメェと同じは胸糞悪ィって言っただけだクソコック」
「何だと?」
「あァ?」

2人の喧嘩が始まってしまった。止めようと声を掛けようとしたらロビンに腕を引っ張られ、他の皆の数値も見に行きましょうと言った。何やら楽しそうだ。

その後、ナミは800でチョッパーとフランキー、ブルックは600という数字が表示された。

いつの間にか全員がダイニングに集まっていて、どうやら分かったのはロビンだけのようだった。ロビンがナミに耳打ちするとナミもああ!と声を上げて、私を含め皆も興味津々で彼女達に目を向ける。
一方、部屋の端で医学の本を読んでいたチョッパーは何か見つけたのか、声を上げた。

「名前が何の実を食べたのか分かったぞ! 効果は半日で副作用も特に無いから安心だ」
「何の数字なの!?」
「それは……ムグッ!」
「ウフフ、言うのを待ってチョッパー。名前、少し席を外してくれる?」
「え!?」

チョッパーの口をロビンが手で塞いで言えないようにしていたけど、分かったのに私だけ秘密ってこと!? 今から皆に話すんだよね?

「お、教えてくれないの……?」
「名前に知られたくない数値かもしれないから、一応確認をとるわ」
「えっ、うん。分かった……」

私に知られたくない数値って何だろうと首を傾げながら、彼女の言う通りダイニングを出た。

何だろう、敵を倒した数? それとも今日の歩数? 一体何をした数なんだろう。中では何を話しているんだろう、後で教えてくれるかな、なんて考えながら皆が出てくるのを待った。

10分程経った頃、話は終わったようで皆がダイニングから出ていく。1番に出てきたウソップに問いかけた。

「ウソップ、何の数字だったの?」
「いやー、知らない方がお前のためと言うか、いや言ったらおれの身が危ねェからおれからは言えねェ」
「エェェェ!」
「聞き出そうとすんじゃねェぞ! 絶対な!」
「えっ、どうして。何かゾロ汗かいてない? 筋トレしたの?」
「汗なんかかいてねェ」
「ロビン、教えて」
「ごめんなさい。口止めされたの」
「ブルック……」
「ヨホホホホ、教える代わりにパンツ見せてもらっても」
「見せるかァ!」

ナミの強烈なパンチにより、ブルックはふっ飛んだ。

「チョッ……」
「チョッパー、ルフィ、釣りしようぜ! スーパーな釣り具を作って来たからよ」
「「わーい釣りだー」」
「……」

皆が私を避けてラウンジから出ていく。最後に出てきたサンジと目が合うが、あからさまに目を逸らされた。ずっと見ても目が合わない。

「サン……」
「名前ちゃんの頼みでもこれだけは言えねェ!」

彼は顔を赤らめて逃げるようにして走って行った。




腹筋(お腹)を触ったら好感度が見える話


0〜1000まで。500以上は信頼している。
友情の好きのMAXは800。それ以上は恋愛として好き。



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彼女がダイニングを出て行った後、皆の視線がロビンに集まった。

「恐らくあの子が見える数値は、彼女に対する好感度。高い数値はそれだけ彼女が好きってことね。……それで合ってるかしら? チョッパー」
「うん、この本にもそう書いてあった。名前が食べた実は、どれだけ自分の事が好きか数値化出来るって。お腹を触るとその数値が見えるんだ」
「……ってことは、ゾロもサンジも名前の事がだーいすきって事だな!」
「言ってやるな、ルフィ」
「何でだ? 仲間のことが好きなのは良い事だろ?」

ニシシと笑うルフィに両翼は黙った。一人は信じられるかと呆れ、もう一人は赤く染まった顔を隠すように両手で顔を覆っていた。

「にしても私とロビンより、ゾロとサンジくんの方が数値が高いっておかしいと思わない? 私の方があの子の事好きよ」
「ウフフフ」
「友人として信頼している数値のMAXは800。それ以上は恋愛として見ている……だそうですよ。なのでナミさんとロビンさんはもう最大値ですね。良いですねェ女性の友情は。ヨホホホホ」

チョッパーの持っている本をブルックが横からのぞきこんで言うと、ナミは納得していた。それと同時にニヤリと口角を上げる。

「へェ、サンジくんは兎も角、ゾロがねェ?」
「ふざけんな。信じられるか、そんな実」

自分の気持ちに気づいていないゾロは他の人間より自分の数値が高い、ましてやサンジと一緒だということが信じられなかった。

「この事名前に話すのか? おれ達は別に構わねェが……」
「この二人だよなァ。見事に正反対な反応だ」

フランキーとウソップが彼らを気にしている中、ナミはここぞとばかりにゾロに彼女の事を聞いていた。

「あんたってルフィと同じで女に惚れるとかなさそうじゃない? 名前のどこを好きになったの?」
「っ、だから!」
「まああの子、私と同じで可愛いしスタイルも良いし性格も良いじゃない? それに器用だから何でも出来るでしょ。話し上手だし聞き上手。年上だけど可愛いから世話焼いちゃうのよね」

彼女の良いところを言い出したら止まらないナミに対して、周りは驚いていた。本人がいればきっと喜ぶだろうが、ナミは彼女の前では素直になれずにいた。こんなにもこの船の航海士に気に入られているとは彼女は知らないだろう。

「可愛い子にあれだけ自分の身体を褒められたらそうなるわよね。ゾロもちゃんと感情のある人間だったみたいで安心したわ」
「オイ、勝手に解決すんな」

「そろそろ出ないと名前さん、待ちくたびれているのでは?」

ブルックの一言に皆がそうだなと頷く。あとはこの事を彼女に話すかどうか。ナミが二人に視線を向けた。

「ゾロ、サンジ君、どうする? 名前に話す?」
「「話さねェ」」

「500ベリーね」
「私は花壇の植え替えを手伝ってもらおうかしら」
「おれは肉ー!」
「じゃあおれはーー」


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