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第五人格夢




トリップ、ギャグ寄り。S10キャラまで

※物語やキャラ設定などすべて妄想なので、
おかしなところが多々あると思います。
ご了承ください。
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最寄駅に着き、二階にある改札に向かう。いつもは階段を使うが今日は階段を登る元気が無かった。周りには誰もいないしエレベーターに乗ってしまおう。

ちょうど私のいる地下に来ていたエレベーターに乗り二つ上の二階のボタンを押した。

箱の中から見る二階は、見慣れない景色が広がっていた。扉は開く。何かがおかしい。きっと見間違いだろうと思い、閉じるボタンを押しても地下階のボタンを押しても何も反応しない。

その瞬間、突然の後ろからの強風により、身体はエレベーターの外へと押し出された。すぐに振り返るがそこにはエレベーターではなく、扉があった。

そんな、これは夢だろうか。いや寧ろ夢であってほしい。
状況を整理しよう。目の前に扉があり、今私がいるのは庭だ。さっきまでの記憶ははっきりしているし頬をつねったら痛い、ここが夢ではないことは確かだ。

「貴女だれなの?」
「っ!?」

麦わら帽子をかぶった女の子が背後に立っていた。どこかで見たことがあるような女の子だ。しかし彼女の服装はまるで……、

「庭師?」
「うん、庭師なの」

まさか……いやそんな馬鹿な。私の前に立つ彼女の語尾には聞き覚えがあるし、この可愛らしい外見も知っている。

ーー頭に浮かんだのは一つ。

「私、トリップした?」
「?」

混乱する頭を抱えて両膝をつく。目の前にいる子が庭師のエマ? 私が毎晩やってる第五人格のエマ?
いやトリップなんてそんな夢みたいなことあるはずがない。……あ、ドッキリか。めちゃくちゃ手の込んだドッキリだな。エマ役の人も可愛いしクオリティが高い。どこかにカメラがあったりするのかな。最近こういう系のドッキリ番組流行っているし、もしドッキリだったら楽しまなきゃ損じゃない?

「私名前と言います! 庭師さんとっても可愛いですね!」
「えっ!? ありがとうなの。私はエマ・ウッズ。名前ちゃんは新しいサバイバーなの?」
「サバ、いや私プレイヤーなんだけど」
「プレイヤーって職業なの? 入って入ってー。屋敷の中を案内するの」

エマに連れられて屋敷の中に入り、食堂と思われるところに案内された。のどが渇いているか聞かれたので首を縦に振ると、お茶を淹れてくるとのこと。なんて優しい子なんだ。

することもなく辺りを見ているとテーブルの向こう側にある扉が静かに開き、誰かが中に入ってきた。あの人は納棺師だ。再現度が高いからすぐに分かった。彼は私と目が合うとヒッと小さく声を上げた。

「あー、お邪魔してます?」
「……」

彼の目から私を警戒していることが分かる。すごいな、キャラ設定までしっかりしているのか。じゃあここはその設定に乗るしかないよね。
警戒心を解いてもらうためにはどうしたら良いだろうか。

「こ、怖くないよー」

手を挙げて自分は無害だと伝える。すると警戒していた目が蔑んだ目に変わった。

「馬鹿にしているんですか」
「うぅ、かっこいい」
「……」

クリっとした目に光がなくなる。整った顔の人にそんな目で見られると興奮してしまう。私はドMだったのかもしれない。
彼は私を視界に入れないよう静かに食堂から出て行った。やばい、ドン引きされてる。これテレビで放送されたら絶対友達に笑われる。


それにしても広そうな屋敷だな。エマ戻ってくるの遅いしちょっとここから出て探検でもしてみようかな。

食堂から出てエントランスホールと思われる場所に足を踏み入れる。豪華そうなシャンデリアとドラマやアニメでよく出てくる左右に分かれた階段。その階段を上ると扉がたくさんあった。きっとサバイバーたちの部屋だろう。

「よく再現できてるなぁ」

と言ってもゲーム内のキャラストーリーでチラッと見ただけだから、再現できているかどうかなんてちょっとしか分からないけど。

確かここの手すりからで誰か落ちたんだっけ。あんまり覚えてないけど。
とキャラストーリーを思い出していたら、ストーリーと同じように掴んだ手すりが取れて身体のバランスが崩れる。

「これもドッキリー!?死ぬー!」

目を閉じて痛を待つ。多分死ぬわ。ドッキリだったら下にマットとかおいてくれてたら良いけど。
しかし痛いのは右手首だけだった。恐る恐る目を開けると、紺色のローブを着た人が私の手首を掴んでいて自分の方へと私の身体を引き寄せた。

落ちるかと思った。バクバクと音を立てる心臓を落ち着かせながら、とりあえず助けてもらったお礼を、と顔を上げると思ったよりその人の顔は近くにあって驚いた。目は隠れていて見えない。……この人、占い師だ。

「大丈夫ですか?」
「はい。助けていただいて、ありがとうございます」
「良かった。ここの手すり、弱ってきているなと思っていたところで。すみません」
「あぁいえ。ほんと、助かりました」

てっきりこの占い師役の人が「てってれー」って言うかと思ったんだけど、違うのか。

「初めましての方ですよね。新しいサバイバーですか?」

またこの質問だ。どう答えるか検証されてるのかな。しかし皆コスプレの完成度が高すぎて、頭に浮かんでいた"嫌な方"な気がして。

「えっと……」
「失礼しました。私は占い師のイライ・クラークと申します」
「名前と言います。あのそろそろ、てってれーってしてくれても……」
「てってれー?」
「これって、ドッキリとかじゃないんですか?」
「ドッキリ?」
「「……」」

それから数十秒の沈黙。私の思考は完全に停止していた。

「ままままって!!! そんな嘘一つついてないような顔しないで! 顔見えないけど!」
「どうやら混乱しているようですね」
「そりゃあ混乱するよ! これドッキリじゃないの!? お願い、嘘でもドッキリって言って」
「あなたはここへ志願してやってきたのではないのですか?」
「してないしてない! いつの間にかここの庭に来ていて……って説明してもあれか。あーどうしよう。ホントに」

混乱する私に「一度落ち着きましょう」と声をかけてくる占い師。どうしようしか言葉が出てこない。本気でゲームの世界にトリップしたってこと? このゲームはマルチとかランクマとかよくサバイバーで行ってたけど、ストーリーとかキャラとかあんまり知らないし、何が何だか分からない。

「お茶でも飲んで気持ちを落ち着かせましょうか」
「お茶……あぁ!! 庭師!! 忘れてた!」

エマちゃんが私にお茶を、と用意してくれていたんだった。食堂に戻らなければ。

「わぶっ!?」
「……」

食堂に戻ろうと駆けだすと壁にぶつかった。さっきまでここに壁なんてなかったのに。

「ななっ!?」
「何?」
「こわっ!」

壁ではなく人だった。 この人は……探鉱者だ。よく見るとガタイも良い。探鉱者ってこんな身長高かったんだ。身長が高いせいもあって見下されてる感じがあって怖い。思わず声に出してしまった。

「何が?」
「ひぃ!」

探鉱者の目が赤く光った気がして、占い師の後ろに隠れた。占い師からは乾いた笑いが聞こえた。

「大丈夫ですよ、彼は体格が良いだけで何もしてきません」
「そ、そうですか?」
「何もしないかは分からないな」
「ひいいいいいい!」
「ノートン……」

探鉱者の発言に、溜息を吐く占い師と怯える私。何を考えているか分からない目で私を見てくる探鉱者に、こっちを見るなという意味を込めて睨みつける。そんな中、間に挟まれた占い師が口を開いた。

「そういえば先程何か思い出していませんでしたか?」
「はっ! そうだった。私食堂に戻らないと。すみません占い師さん、本当助けてくれてありがとうございました。では」

いざ! 庭師エマちゃんの元へ!

「あら?」
「えっ」
「エマが言っていた新しい子かしら」
「えっ、あ……」

あの場から一刻も早く離れたくて食堂に戻ってきたけど、新しいキャラの登場に混乱して言葉をまともに発することが出来ない。

「大丈夫?」

ダメだ、頭がふらふらして視界が真っ白になる。体の自由もきかなくなって、その後どうなったのか記憶がない。

++

柔軟剤の良い匂いがした。目を開けると白い布団に包まれていて、自分はベッドの上で寝ていたのだと分かった。

「気が付いた? 急に倒れたから驚いたわ」
「すみません」
「大丈夫よ、ここに来て混乱する人なんて沢山いたもの」

彼女は水の入ったコップを渡してくれて、私の背中を撫でた。あたたかい手に目頭が熱くなる。目に溜まったものが下に落ちていく。止めようと思っても全然止まらなかった。

「ごめ、なさっ」
「気にしなくていいわ。好きなだけ泣きなさい」

それから溢れ出てくるものがもう出てこないくらい出した。不安も身体から抜けたのかもしれない、気持ちが楽になった。

「落ち着いたわね。私はエミリー・ダイアー。医師よ」
「医師……。名前と言います。すみませんでした」
「大丈夫。ところであなたは新しいサバイバー?」
「いえ、プレイヤーです」
「プレイヤー? どういうことかしら。……ここで深く考えても誰も教えてくれないし貴女の部屋の案内をするからついて来て」
「私の部屋があるんですか!? ついていきますお姉さま!」
「おかしな子ね……」

私の部屋があるなんて有難すぎる。トリップしてしまった以上あれこれ考えてもなるようにしかならない。不自由なく生活出来るなら深く考えないでおこう。ポジティブポジティブ。明るい気持ちで頑張るぞ。

「今空いているのはこの部屋ね。来た人順に部屋を割り当てているからこの間来たルカ・バルサーが隣の部屋にいるわ」
「ありがとうございます」

ルカ・バルサーって誰だっけ。ルカ……女の子かな。キャラは職種で覚えていたから名前までは覚えてないな。

しかしこの世界はどういう風に回っているのだろう。気になる。それにここにはサバイバーしかいないのかな。ハンターはいるのかな。ゲームに実装されたキャラは全員いるのかな。ルカって子が一番新しいって言ってたな。そのルカって子がいったい誰なのか。それにもしここで暫く生活をするのなら誰が他に住んでいるのか知っておかないといけない。

「よし、挨拶回りだ!」

順番に部屋のドアをノックしていこう。まずはお隣のルカさんから、と思って部屋をノックしても反応がなかった。不在のようだ。
少し離れた部屋のドアが開いたので、そちらに目を向けると先程食堂で会った納棺師が部屋から出ようとしていた。

「あっ!」
「え?」

彼もこちらに気づいたようで、黙って部屋に戻ろうとするので声を上げた。

「待って待って待て待て!」
「やっやめてください!」
「ちょっとお話ししよう!」
「貴女と話すことなんてないです」
「私はある。お願い! ちょっとだけだから。色々教えてよ」
「他をあたってください」
「ここに来たばかりだから知らない人ばっかりなの。ていうか意外と力あるねキミ!」
「僕も貴女の事知らないです。ドアに足を挟まないでください」

ドアを閉める力が強くて、挟んでいる足が痛い。本気で嫌そうな顔してるけど、そんなこと気にしない。

「私名前。はい、これで知らない人じゃなくなった!」
「何故勝ち誇った顔して言ってくるんですか。早く足退けてください」
「やだね。名前教えて。教えてくれるまで引かないよ」
「……イソップ・カールです」
「イソップかぁ。私の隣の部屋の人、ルカって言うらしいんだけどどんな人?」
「嘘つきだこの人……。彼は囚人です」

囚人ってことは、解読キャラの男の子か。それにしても納棺師って整った顔してるけど、言動も面白いな。

「もういいですか」
「よし、じゃあ部屋でゆっくり話そうよ!」
「……わかりました」
「え、ほんと!?」
「他の人を紹介します。それで良いですよね」
「えーーー、イソップみたいに面白い人にしてね」
「僕のどこが面白いんですか……」
「そういう顔するところ」

そう言って彼が連れてきたのは探鉱者だった。確か名前はノートン。占い師がそう呼んでいた気がする。

「お願いします。この人と会話してあげてください」
「会話?」
「イソップ、チェンジで。私の希望通りじゃないです」
「いけに……会話相手は連れてきました。では僕はこれで」

生贄って言おうとしたな。探鉱者って絶対苦手なタイプだと思うんだよね。ガタイも良いしなんか怖そうじゃん。

「待ってイソップ!」
「ふ、服を引っ張らないでください!」
「ここにいてね。じゃあノートン? 質問しても良いですか?」

イソップの服の裾を引っ張りながら、ノートンに恐る恐る話しかける。

「別に良いけど……手短にね」

ノートンにこの世界について質問すると面倒そうな顔はされたものの、意外にもちゃんと答えてくれた。

サバイバーとハンターは別の場所にいて、一日三回、四人のサバイバーのもとに招待状が送られてきて招待状を受け取ったものはゲームに参加しなければならない。ゲームの内容は、私がやっていたゲームそのものだ。
ゲーム内で負傷しても荘園に戻ってこれば無傷状態に戻るらしい。色々とファンタジーな世界だなと思いながらも真剣に話を聞いた。

「ーーってところ。今晩のゲームは僕と彼と……誰だっけ」
「ナイエルさんとべハムフィールさんです」
「そうそう。この四人に招待状が来ていてゲームに参加することになってる」
「そうなんだ。分かりやすい説明ありがとう。えっとちなみにナイエルさんとベハムなんたらさん?の職種教えてほしい」
「確か……調香師と空軍です」
「へぇ! 君たちの事顔と職種は一致してるんだけど名前は覚えてなくて。ごめんね」

えへ、と頭をかきながら笑うと二人は顔を見合わせていた。

「変な人だね」
「はい。僕もう戻っていいですよね」
「ありがとう二人とも! とっても助かった」

この二人、優しいかもしれない。




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