起こしに行きます
霖さんからの頂き物。
「さて、今日も戦いがはじまるのか。」
天気は晴れ。日差しは少し強いけど風も穏やかで練習日和だ。
まぁ、でも今日は練習ないんですけどね。
では、何と、戦うか‥‥‥
それはですね。
数日前、昼食時に休みの日に起きてくるのが遅い方が居て片付かないんだよねと厨房スタッフさんに言われました。
私に言われてもと思いますが‥‥‥これは遠回しに起こしに行けと言われているんでしょう。きっと。
確かに休みとわかれば皆さん起きて来ない方達がいるんですよ。
一部を除いて。サポートしてくれている方の仕事が終わらないので、起こしに行きます。すごくすごく嫌だ。人見知りにはきついよ。
やるけども、頑張るけども。
「何処から行こうかな。」
とりあえず、立海メンバーの方がまだ気が楽だから‥‥‥と、考えていると。
「おはようございます。苗字さん」
「柳生先輩。おはよう御座います。お早いですね。」
「ええ。先程朝食も頂いてきました。苗字さんは今から来られてない方にお声がけしに行くのですか?」
え、なんで知ってるの?柳先輩みたい。誰かに聞いたのかな。
「はい。頑張ってきます。では、失礼します。」
「はい。お気をつけて。アデュー」
柳生はやっぱりきっちりしてるなあ。
見送ってもらえると少し嬉しかったりするな。
今度から練習に行く皆に一言でもかけてあげようかな。
とりあえず、確認が取れてない中で、確実に寝てそうなのはと。
ドアを数回ノックして様子を伺う。
起きて出てきてくれたらいいなぁ。
「おはようございます。切原先輩!起きてますかー?朝ですよ。」
シーン。物音一つない。この部屋の皆は起きて部屋にいないのは練習に行く前の日吉に確認済み。
もしかして、起きて自主練に行ったのかな。
一応確認しよう。日吉に中入って良いか聞いて許可貰ったんだよね!大分勇気出して頑張った!他の人はもっと無理だもんな。
ほんともう疲れたよ。
とりあえず、開けようか。頑張れ、私!
がちゃりとドアを開けて、中の様子を伺う。
あーやっぱり寝てる。
「お、起きて下さい!朝ですよ!皆さん起きて自主練に行ってる方もいますよ!」
「うーん、もう少し‥‥‥」
ゴソゴソと動いているものの起きる様子はなし。
ただでさえ、男の子の部屋だし落ち着かないし、起こすのだってかなり頑張ってるのに‥‥‥
そうだ、日吉にライバル意識あるから話題にしたら起きるかな、よし!
「‥‥‥ひ、日吉先輩朝から自主練に精がでてたなぁ。このままじゃ、実力差が出来てしまうかもですねー。」
‥‥‥シーン。反応なし。いい作戦だと思ったのに。
これは、簡単には起きないな。
声かけたり、頑張って揺すったり、ワカメとか気にしそうな事言っても効果なし。
「1人目からこれじゃ心折れるよー。」
どうしようか‥‥‥。
あっ!お母さんに頼ろう。柳ならきっと起きてるもんね。それに、どうしたら起きるか絶対分析してくれると思うし。
「何処にいるんだろ。とりあえず、ホールに行ってみよう。」
ホールにはいてないなぁ。食堂はどうかな。
「‥‥‥居ない。」
誰かに聞いてみる?でも、誰に聞けば‥‥‥そもそも聞く勇気も無いな‥‥‥
ん?あそこに座ってるのって‥‥‥
「幸村先輩、真田先輩!おはよう御座います。」
「やぁ。苗字さん。おはよう。」
「ああ。おはよう。さっきからキョロキョロと落ち着きが無いぞ。たるんでるんじゃ無いか!」
「す、すみません。柳先輩を探しててついキョロキョロしてました。あ、あの、見かけてませんか?」
ひー。真田に見られてた。朝から圧が凄い。ちょっとまだ怖いな‥‥‥
それと幸村くんはずっとニコニコしてて逆に怖い。
「うむ、そうか。俺は見かけて無いな。部屋から直接ここにきたが。」
「柳なら、コートにいたの見かけたよ。
で、苗字さんはなんで柳を探してるの?」
な、なんか幸村くんの笑顔が黒いような‥‥‥
「えと、相談したいことがあって探してます。」
そうなんだと顔は笑ってるが目が笑って無いです、魔王様。
「あ、ありがとうございます。探しに行ってきます。」
「行ってらっしゃい。見つからなければ俺も相談に乗るからいつでも帰っておいで。」
「はい。ありがとうございました。」
なんだかんだ優しいよね。笑顔怖い時あるけど。
とりあえず、コートに行こう!
「‥‥‥見当たらないなぁ。」
うーん、探すのに時間かけ過ぎると起こしに行けなくなるし時間が勿体ない。
諦めて、魔王様の力借りようか。
「‥‥‥ある意味1番効果あるかもしれない。」
考え込んでいると、後ろから‥‥‥
「それはあまりおすすめしないな。」
「っ!柳先輩っ!」
「おはよう。苗字。赤也を起こしに行って起こせなくて俺を探していた確率80%か。」
「お、おはようございます。さ、流石ですね。柳先輩、まさにその通りです。でもおすすめしないって‥‥‥」
「精市に俺の居場所聞いたんだろう。それでも、俺を中々見つけられなくて、精市に頼ろうとしたんだろ。
赤也のトラウマにもなりかねないからやめておけ。」
なんでいつも分かるんだろう。情報収集と、分析恐ろしや。まぁ、でもいつも助けてもらってるからありがたい!
やっぱりお母さんに、頼るのが1番!
「トラウマ‥‥‥ですか。」
確かにあの黒い笑顔が寝起きだったら少し怖くて記憶に残りそう。確かに、トラウマになりそうだ。
「それもそうですね。じゃあ、どうやって起こせば良いですか?」
柳先輩は少し悪そうに微笑みながら、
「精市は連れていかなくても、精市の、名前を使うのは効果的だと思うぞ。早く起きないと怒られる、練習量増やされるとかな。
苗字はライバルの事で起こそうとしたんだろうがあいつの中では自分の方が上だから余り効果なかったんだろう。」
そ、そこまでお見通しですか。流石お母さん。
でも、確かにライバルより部長の方が効果ありそう!
「ありがとうございます。‥‥‥あ、あの、この後一緒に他の方も起こしに行ってくれたりしませんか?」
もう、お母さん連れて行くのが1番効率がいい気がする!
「シャワーだけ浴びたら合流しよう。とりあえず、赤也起こしてきてやれ。余り遅くなるとほんとに怒られそうだからな。」
「ありがとうございます。」
柳は頭を撫でながら、笑顔で言うとシャワーを浴びに部屋に戻っていった。
柳からアドバイスももらったし、再戦と行くとしよう。
そう意気込んで、私はスタスタと赤也の部屋に向かった。
数回ドアをノックしても反応が無いので、がちゃりと再びドアを開ける。
「失礼しますー。‥‥‥まだ、やっぱり寝てる。
よ、よし!いい加減起きないと、幸村先輩に報告しますよ!きっと、怒るだろうなぁ、怒らなくても練習量増えたりするかもですね。」
「っ!起きた!起きたから言わないでくれ!」
おぉー!流石、柳。効果抜群!でも今のなら真田の名前も使えそうかも!
後輩にとって先輩は尊敬しつつも怖い存在でもあるんだなあ。
「おはようございます。早く支度してご飯食べにいって下さいね。」
笑顔で伝えると、分かったから報告しないでと頼み込む赤也にほっこりしながら部屋をでた。
すると、出たところでお母さんが、立っていた。
「柳先輩。早かったですね!」
「ああ。効果は抜群だったようだな」
満足げな顔で頭を撫でてくれる。
これがあるから頑張れるよね。なんか落ち着く。
よし、後数人頑張って起こしにいこ!
「柳先輩、よろしくお願いします!次は仁王先輩起こしに行きましょう!」
柳と、2人で残りの寝ている人達を起こしに回る。
中々声が掛けにくい人でも柳先輩が代わりに起こしてくれているし、助けてくれる。
ゆくゆくは1人でも起こしに回れるよう頑張ろう。
「柳先輩、ありがとうございます。」
改めてお礼を伝えると構わないと微笑んでくれる。
ぼそっと「情報収集にもなるしな。」と呟いたことは聞かなかったことにしよう。
「次は、何処だ。まだいるか?」
「次はですね。」
今日もなんだかんだと1日が始まって行く