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第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -

バレンタイン




朝練を早く切り上げた男子テニス部のレギュラー達は、部室に集まって会議を開いていた。そこに名前の姿はない。

「明日は何の日か分かるかい? はい、真田」
「むっ、明日は2月14日だな。何かあるのか」
「バレンタインだよバレンタイン! チョコ食い放題だぜぃ!」
「丸井君。それはチョコをくださる方に失礼ですよ」

「そう、明日はバレンタインデー」
「幸村。それがどうしたんだ」

真田がそう尋ねると、幸村は下を向いて黙った。他の者は頭の上にクエスチョンマークを浮かべている。少しの沈黙の後、幸村は口を開いた。


「苗字さん、誰にあげると思う?」

真剣な表情で呟いた幸村に、皆はギクリとした表情を見せた。

「ややや柳先輩はどう思うっすか!?」
「苗字はあげる相手がいないから作らない確率90.1%だな」
「マジっすか!?」
「ハァァ!? 作らない確率高すぎだろぃ!」

驚きそして残念がる複数の声が部室内に響き渡った。

「作ってくれる確率を上げるためにも、皆、今日は苗字さんにアピールするよ」

幸村の一言に、数名が「イエッサー!」と答えた。彼らもこういう時は中学生なのである。


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一限終わりの休み時間、柳生と仁王は一年の教室まで態々足を運んでいた。三年の先輩、ましてやテニス部のレギュラーが教室に入ってきたことにより教室がざわめく。

「こんにちは、苗字さん」
「よう」
「こ、こんにちは……?」
「体調はいかがですか?」
「えっ? あ、大丈夫です」

朝練の時、体調が悪いように見えていたのだろうか、そんな疑問を浮かべ名前は答えた。そう言っているのにもかかわらず仁王は名前の額に手を当て、熱を測る仕草をした。

「っ!?」
「……熱はなさそうやの」
「はっ、ハイ! なななっないです! 全然!」
「ほー? ちょっと顔が赤くなってきたのぅ」
「本当ですね。仁王君、やはり苗字さんは熱があるのではありませんか?」
「そうかもしれん」
「ああああありませんっ!」


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次の休み時間は赤也と柳が名前の元へと訪れた。

「名前ー」
「えっ」
「いつも帰宅したら何してんの?」
「ばっ「晩御飯を作るとお前は言う」……はい」
「今日は沢山作れよ!」
「えぇ……?」
「作れと言っても夕食を沢山作りすぎても、余る確率が高いから気をつけろ」
「じゃあ、どうすれば……」
「まっそういうこと。じゃあな!」

「え、どういうこと?」

名前は混乱したままだったが、二人は教室を出て行った。同じクラスメイトも二人が何を言いたかったのかさっぱりだ、と首を傾げていた。ただ一人、彼女の最も親しい友人を除いては。


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昼休みには屋上で友人と食べる名前の元に幸村が来た。

「今日の部活は休みでいいよ。ゆっくり買い物でもしておいで」
「え? あ、はい」

男子テニス部のマネージャーをしている名前だが、部長の幸村から本日は休みでいいとのこと。今日のテニス部のレギュラー達はどこかおかしい。そう思い、幸村が去って行った後に隣にいる友人に声をかけた。

「ねぇチーちゃん、今日何かあるの?」
「今日は何もないよ、今日は」
「えぇ? じゃあいつ?」
「ふふふ。それより部活休みになったんだし、放課後買い物に付き合ってくれない?」
「うん? 良いけど……」

彼女が返事した瞬間、教室のドアがガラリと音を立てた。またもやテニス部レギュラーの登場だった。

「あ、名前」
「……?」
「俺はさ、食いもんなら何でも好きだからな! 特に甘いもんは大好きだぜぃ」
「は、はぁ。知ってます、けど……」
「ってことでシクヨロ」

訳がわからない、そう顔に書いたまま友人の方へ名前は顔を向けると、友人は顔を背け肩を震わせていた。


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放課後、友人の係の仕事が終わるのを待っていた名前は、部活に向かう真田とジャッカルを見つけた。二人も名前の存在に気づいたようで、彼女の元へと向かった。

「今日は休みのようだな」
「あ、はい。すみません」
「部長からの命令だし、謝らなくたって良いんだぜ」
「あ、あの……何で今日休み、なんでしょうか」
「あぁ。明日はバレ「ななななんでもねぇよ!?」……?」

ジャッカルが話の途中な大声を上げる。名前と真田は首を傾げていたが、ジャッカルが真田にコソコソと何かを話した後、二人して「何でもない」と言い張った。

「いつも忙しいしたまには休みも必要だと思ってさ。部活がない分ゆっくり過ごせるだろ?」
「そ、そうですね」
「じゃあまたな、苗字」

名前は二人に別れを告げ、待っていた友人と放課後を楽しんだ。


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バレンタイン当日、夕方の部活時間。またもやテニス部のレギュラー達は部室に集まっていた。名前は部員と共にコート整備をしている。

「それで皆どうだった?」
「いつも通りの挨拶だけでしたね」
「アピールしたつもりだったんだけどなー。普通気付くだろぃ」
「それらしい袋も無かったぜよ」

誰もが名前のチョコを諦めていたその時。ガチャリと部室のドアが空いて彼女が遠慮がちに入ってきた。

「あ、あの……」
「どうしたんだい?」

「っ……、こ、これ……。作ってきまして」

名前がカバンから取り出したのは可愛くラッピングされたマフィンだった。ザッと全員が名前の元に集まった。誰も何も言わないので名前はまた口を開く。

「皆さん、たったくさん……貰ってましたし、いらないかも、ですけど……」

「「「いる!!」」」

レギュラー達全員の声が部室の中に響き渡った。
立海テニス部は本日も平和である。


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