ーー最近テニス部のレギュラーに色目をつかう女がいる。

そうよく耳にするようになりました。噂によると最近転校してきた一年生だとか。私はそれが本当なのか明らかにする為に調査を進めています。


あ、申し遅れました。私はテニス部レギュラーのファンクラブ会長、名前は……伏せておきます。



テニス部のレギュラーはイケメン揃い。その為盗難にあったり、迷惑がられているのも分からず頻繁に話しかけたり。

そういった当たり前の事を守れない女子が増えてきています。
最近は盗難が多発していてレギュラーの皆さんも私達ファンクラブも困っているというのに、更にそういう女子が現れたのかと思うとうんざりします。



そこで私は噂の一年の教室に行きました。行ったといっても廊下から見るだけですが。


顔は元々調べていた為すぐに分かりましたが、やはり特に可愛いという訳ではないですね。それに化粧は一切していないと思われます。

今は横の席のお友達と仲良く話しているようですが、今見た感じではどこにでもいるような平凡女子に見えます。

あ、近くの席の男子が二人に声をかけました。沢山のノートを手に持っているのでノートを出すように声をかけたのでしょうか。

……あら？苗字さんの顔が明らかに強張りました。それに下を向いていて相手の男子の顔を見ていません。さっきまではお友達と楽しそうに話していたのに。


「ごめんね田中君！この子極度の人見知りでさー。特に男子はダメみたいで！」

「そうなんだ、まぁ別に気にしてないぜ」

『……ご、ごめん』


友達がノートを集めている男子に苗字さんの事をフォローしてあげているように見えますね。人見知りで更に男子が苦手な性格。

こんな子がテニス部に色目をつかうなんて出来るのでしょうか。顔を見れない時点で無理なのでは……と思うのですが。






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短い休み時間だけでは真相は分からないので、昼休みも様子を見に来る事にしました。苗字さんとその友達の二人で食堂へ向かっているようなので、私も後を追う事にします。


やはり普通にいる女子です。ずっと見てては飽きる程に。




……！！あれは、丸井君と桑原君！

二人は苗字さんの姿を見つけるなり近づいて行きました。やはり苗字さんは……あら？

テニス部の二人が近づいてくるのを発見したみたいですが、苗字さんは二人とは逆方向に早足で歩いて行きました。


どういう事なのか。すると丸井君が苗字さんを走って追いかけ捕まえました。そしてどうやら説教しているように見えます。しかし苗字さんはやはり目を逸らしたまま。それに色目をつかうどころか嫌がっている様に見えますね。





昼食を終えた苗字さん達は図書室に向かいました。先程の事でテニス部への対応が分かりましたが、今日一日調査すると決めていたので最後まで調査をやり遂げます。


図書室には柳君と柳生君がいました。苗字さん達は時間潰しに図書室に来たようで、図書室の中をブラブラと歩いたり本を取っては本棚に戻す行動を何度かしていました。

そして柳君が苗字さんの存在に気づいたみたいで、柳君は少し口角を上げ苗字さんに近づいていきました。あの笑顔は一体……。


柳君に気づいた苗字さんは、先程の丸井君に対する反応とは異なり、少しですが目を見て話していました。慣れているということでしょうか。

付き合っているという可能性も……いやそんなことはないでしょうね。調べたところ二人とも付き合っている人はいないみたいですし、第一最近出会った方と付き合うなんて柳君の性格からしてあり得ないとも言えます。





フッ、やはり噂は間違いだったようです。何かきっかけがあって苗字さんとテニス部レギュラーが仲良くなっただけのようです。
ファンクラブのメンバーにも伝えておかなければ。





とあるファンクラブ会長の調査