×
第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -

青城夢@




長い授業が終わり休憩時間に入る。長いと言ってもまだ一限目が終わったばかりなのだが。ふと、隣の席に座る顔の整ったうざいやつに声をかけた。

「オイ、川」
「俺、川じゃなくて及川さんなんですけど」
「ちゃんと呼んでんじゃん」
「名前さぁ、外見だけは良いんだからもっと女の子らしい話し方したほうが良いと思うよ。外見だけは良いんだから」
「うっさいボケ。あんた以外にはちゃんとしてるわ」

「苗字さーん。一年生が呼んでるよ〜」
「えー? ありがとう」

「ほんっと外面は良いよね」

溜息を吐く及川の足を誰にも見え無いように踏んでやった。「いたいっ」うるさい。一年って誰だよ、及川に数学のノート借りようと思ったのに。席を立つと廊下にはマイエンジェルの姿が見えた。

「私の可愛い可愛い国見ちゃん。何か用かい?」
「……何もないです。じゃ、」
「ちょ、待ってごめんて。で、どうしたの国見」

のってくれないし、ツッコミも入れてくれない国見。そんなウザって顔されたら先輩傷ついちゃうぞ。

「これ苗字さんのですよね」

手には私の数学のノート。次授業なのにノートが見当たらないから困ってたんだよね。どこにあったんだろう。でも放課後の部活の時じゃなく、今わざわざ届けに来てくれるなんて……

「国見私のこと好きなの?」
「……はい?」
「今、はいって!国見がはいって言った!やったね私たち両おも、ブヘッ」
「お前さ、何でそうなるの。ノート届けに来てくれただけでしょ」

痛い。及川のやつ、私の頭にチョップしてきた。危うく舌噛みそうになったじゃんか。私より数十センチも高い及川を睨むと、見下された。あぁ、アッパーしたい。

「そんなことばっかり言ってると、後輩に嫌われるよ」
「及川よりは好かれてるから」
「え、うそ」
「……あれ、国見は!?」
「名前が馬鹿なこと言ってるから、ほらもうあんな遠くに」

遠くに行ってしまった国見を大声で呼ぶと、いつもの気だるそうな顔が振り向く。ありがとねー! と届けてもらった数学のノートを振る。国見はぺこりと頭を下げて廊下の角を曲がった。可愛いやつめ。ノートを渡された時に頭を撫でてあげれば良かった。あの子身長高いけど。

さて、数学の授業も頑張るか。



********************

洗濯したタオルを持って体育館に入ると、汗だくでバレーをしている彼等。むわっとした熱い空気に汗が噴き出た。休憩に入る音が鳴るとむさ苦しい男共がこちらにやってきて、誰かに後ろから二の腕を掴まれる。手のひらが熱い。

「あっつー」
「暑いなら離れてくれるかな、花巻クン。私も暑い」
「名前の腕冷んやりしてて気持ちいね」
「聞けよ」

「そういえば名前って茶道に華道にピアノまでしてんの?」
「は? どこから情報」
「それ俺も聞いた」
「何の話〜?」

花巻の一言でまっつんやら及川やら、ゾロゾロと部員(主にスタメン)が集まってきた。暑苦しいから近づいてくんなボケ。

「うちのクラスで聞いた」
「まぁ名前は黙ってればそんな感じのイメージあるもんね」
「怠い」
「お前も大変だな。勝手に噂されんの」
「ほんとだよ! この間までは及川と付き合ってるとか言われてたしさぁ……あの噂はほんと無理ありえない吐くわ」
「ぶっ、そこまでかよ」
「名前も岩ちゃんも酷い!」

同じクラスのバレー部の部長とマネージャーってだけで、付き合ってるとか言われるのほんとやだ。外見でイメージ持たれるのも嫌だし。ていうか茶道に華道にピアノってどこかの金持ちか。

「はい、散った散った。しっしっ」
「俺ら動物かよ」
「花巻もこの手を離して水分補給して」
「ウィッス」

掴まれた腕をぶんぶんと振り、花巻にドリンクを渡す。そういえば救急箱どこ置いたっけ。……あ、あったあった。

「んで少年はこっちね」
「? はい」
「さっき突き指してたでしょ。テーピングしてあげるから手貸して」
「あっありがとうございます」

金田一はほんと良い子だなぁ。ちゃんとお礼が言えるなんて。いや、これが普通なのか。テーピングを巻いてあげると、「苗字さん器用っすね」と褒められた。やめろよ照れるじゃないか、と金田一の髪の尖った部分を指先でツンツンと触ると、頭の上にクエスチョンマークを飛ばしていた。それにしてもどいつもこいつも背が高いな。頭を撫でるのに一苦労だまったく。


|back|